脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

読書

清濁併せ呑む度量を持ち、聖と俗の間での経験も積んできた二人による「文章」をめぐる対談集 『文章修業』読後感

文章修業 作者:勉, 水上,寂聴, 瀬戸内 岩波書店 Amazon 私はつい最近会社がつくづくと嫌になったことを直接のきっかけとして、文筆業に本格的にシフトしていくことを決意した。以前から考えていたことでもあり、また実際にちゃんとギャラの出る(ものすごく…

忙しなき日常から逃れてしばしカオスの世界に遊ぶための短編 『令和の雑駁なマルスの歌』読後感

令和の雑駁なマルスの歌 作者:町田 康 U-NEXT Amazon この本の読後感を書くにあたり、はたと考え込んでしまった。 『令和の雑駁なマルスの歌』というからには『○○時代の統一性のあるマルスの歌』とでもいうべき存在があるはずであり、試みに「マルス」という…

手帳はアタマのUSBメモリー 『手帳フル活用術-仕事の達人、27人の「手のうち」!』読後感

手帳フル活用術―仕事の達人、27人の「手のうち」! (知的生きかた文庫) 作者:中島 孝志 三笠書房 Amazon 何度か書いているが、私は現在A5サイズのシステムて手帳を使用している。買い求めてからそろそろ20年近くになるため、外見は堂々たる風格を持っているが…

どんな分野で活躍する人の足元にも広がっている深くて暗い落とし穴 『イップス 病魔を乗り越えたアスリートたち』読後感

イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち (角川新書) 作者:澤宮 優 KADOKAWA Amazon 私は、プロないしはその道のトップレベルで活躍できるほどのアスリートになった経験はない。したがって、この本に書いているような、極度の緊張を強いられる場面なんぞに…

自分の常識は他人の非常識 『HSPサラリーマン 人に疲れやすい僕が、楽しく働けるようになったワケ』読後感

HSPサラリーマン――人に疲れやすい僕が、 楽しく働けるようになったワケ 作者:春明 力 Clover出版 Amazon 標題の書の中の「HSP」とはHighly Sensitive Personの略。詳しくは↓のサイトを参照いただきたいが kenko.sawai.co.jp 要するに過度に繊細で「普通の人…

考えれば考えるほどわからなくなるけど、一つだけヒントをもらえた一冊 『天皇とは何か』読後感

天皇とは何か (宝島社新書) 作者:井沢 元彦,島田 裕巳 宝島社 Amazon 独特の「井沢史観」で知られる小説家、井沢元彦氏と伝統的な宗教から新興宗教まで幅広く研究し、さまざまな形で言及している宗教学者島田裕巳氏との対談をまとめた一冊。題名の通り、「天…

逃げるは恥でもないし役に立つ 『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』読後感

メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術 作者:わび ダイヤモンド社 Amazon 先日、昨年の成績を通知された。評価は最低。 ちゃんとやるべきことをやって、しかも当初の目標値には届いていないものの、ちゃんと結果…

お勉強の一科目にしてしまうのはもったいないほど歴史って面白い 『戦国武将の選択』読後感

戦国武将の選択 (産経セレクト) 作者:本郷和人 産経新聞出版 Amazon 各種のメディアに登場することも多い、著名な歴史学者本郷和人氏が、自身の研究のど真ん中である中世を取り上げた一冊。 学校でのお勉強の中の一科目として、知識の暗記ばかりを求められが…

反省だけなら猿でもできる。全く反省しないという「選択」は人間にもできる 『失敗は忘れていい 反省はしなくてもいい:イヤなことばかり思い出してしまうあなた』読後感

失敗は忘れていい 反省はしなくていい: イヤなことばかり思い出してしまうあなたに 作者:福島章信 Amazon ここのところ、主にココロの状態があまり良くない。昨年から拝命した仕事がトラブル続きで、その処理に疲弊したのと、ついに以前からの仕事にまで影響…

怒りのエネルギーは有効活用しよう 『キミは「怒る」以外の方法を知らないだけなんだ』読後感

キミは、「怒る」以外の方法を知らないだけなんだ 作者:森瀬 繁智(モゲ) すばる舎 Amazon 最近特に怒りを感じることが多い。それもウクライナへのロシアの侵攻という暴挙に対してなどの「高尚」な怒りではなく日常の瑣末的な事への怒りだ。 取引先は勝手にサ…

嫌な気分になることのなかった短編集 『サファイア』読後感

サファイア (ハルキ文庫) 作者:湊かなえ 角川春樹事務所 Amazon 「イヤミス」の第一人者湊かなえ氏の短編集。 松たか子主演(ついでに言うと「子役」芦田愛菜の出世作)で映画化されたことで大々的に宣伝されていた『告白』を試しに読んで、そのエンディング…

『枕草子』は教材ではなく堂々たるエンターテインメント作品 『ちょっと毒のあるほうが、人生うまくいく!』読後感

ちょっと毒のあるほうが、人生うまくいく! (知的生きかた文庫) 作者:清水 義範 三笠書房 Amazon 先週末から花粉症が本格的に始まり、鼻水はずるずるだわ、目は痛いわ、熱っぽいわで体調は最悪。おまけに仕事は面倒臭いことばかり。過去の担当者がずるずると…

満を持してのウクライナ侵攻だったのか…  『イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭 EU離脱の深層を読む』読後感

イギリス解体、EU崩落、ロシア台頭 EU離脱の深層を読む PHP新書 作者:岡部 伸 PHP研究所 Amazon ここのところ連日に渡り、各メディアが大きく取り上げ続けているのが、ロシアのウクライナ侵攻。 各国の首脳や国連の場でもロシアを非難する声明が発表され、在…

関西のラグビーはいつでもめっちゃ熱い 『ラグビーが好きやねん』読後感

ラグビーが好きやねん 作者:鎮 勝也 ベースボール・マガジン社 Amazon 自身もラグビー経験者であるスポーツライター鎮勝也氏による、ラグビー愛に満ち満ちた一冊。 ベースボールマガジン社が誇るラグビー専門誌『ラグビーマガジン』が運営するラグビーリパブ…

珍記録の前に珍妙な文章をなんとかしてほしい 『超一流 プロ野球選手の珍記録:これぞ伝説‼︎名プレーヤー達の勲章‼︎』読後

超一流 プロ野球選手の珍記録: これぞ伝説‼ 名プレーヤー達の勲章‼ (Kotobuki出版) 作者:峰岸 琢磨 Kotobuki出版 Amazon ある日のKindle unlimitedにリストアップされていたので、ヒョイっと衝動DLした一冊。 内容はまあ、やたらと長い題名の通り。1回に2回…

ど真ん中の実録モノ 『S霊園 怪談実話集』読後感

S霊園 怪談実話集 (角川ホラー文庫) 作者:福澤 徹三 KADOKAWA Amazon アウトロー小説と怪談の二刀流として名の通っている作家福澤徹三氏による実録怪談集。 私は「怖い小説」は好きだが、いわゆる霊感というものが皆無な鈍感体質なので狐狸妖怪の類は信じて…

女の一人もたらしこめねーやつが万人に支持されるわけゃねーだろ 『イタリア「色悪党」列伝 カエサルからムッソリーニまで』読後感

イタリア「色悪党」列伝 カエサルからムッソリーニまで (文春新書) 作者:ファブリツィオ・グラッセッリ 文藝春秋 Amazon 女性に対しては口説くのが「礼儀」とされている国、イタリア。この国の歴史を形作ってきた錚々たる面々の「業績」を集めたのが標題の一…

何もかもが正反対な異色コンビのバディもの 『逸脱捜査 キャリア警部・道定聡』読後感

逸脱捜査 キャリア警部・道定聡 (角川文庫) 作者:五十嵐 貴久 KADOKAWA Amazon 正反対のキャラを持つ二人の刑事が難事件を解決していく、いわゆるバディモノ。キャリア警部が「逸脱」した操作をするとなると、どうしても杉下右京氏の顔が浮かんできてしまう…

「スポーツ小説」の第一人者による短編集 『ターンオーバー』読後感

ターンオーバー (ハルキ文庫) 作者:瞬一, 堂場 角川春樹事務所 Amazon 世間的には、警察モノの作家として広く知れ渡っているであろうと推察されるが、私の中では「スポーツ小説」の書き手としての印象が強い堂場瞬一氏のスポーツ短編小説集。 最初に読んだ堂…

あれから早二十年以上も経っちゃったんだ… 『千年世紀末の大予言』読後感

千年世紀末の大予言 (角川ホラー文庫) 作者:桐生 操 KADOKAWA Amazon 欧州の歴史を描くことをメインテーマにしている桐生操氏が、ノストラダムスをはじめとする、予言者たちの言動を集めた一冊。桐生氏の著作は、いわゆる「下ネタ」エピソードを集めたものが…

私の目指す文章の一つの理想型 『映画×東京とっておき雑学ノート 本音を申せば4』読後感

映画×東京とっておき雑学ノート 本音を申せば4 (文春文庫) 作者:小林 信彦 文藝春秋 Amazon 小林信彦氏が週刊文春に連載している人気エッセイ『本音を申せば』を書籍化したものの、文庫本版。「4」とあるから4冊目なのだろう。2007年の記事を収録してある。 …

読む精神安定剤として常備しておきたい一冊 『人生が楽になる心の「立ち直り」術』読後感

人生がラクになる心の「立ち直り」術 (集英社文庫) 作者:斎藤 茂太 集英社 Amazon こういう本を手に取ってしまうときは、何しろ心が疲れている時だ。年末年始に仕事のミスが続き、落ち込んでいる時に、人事異動が発令され、「え、あんな奴が管理職?」みたい…

オリックスバファローズの2021シーズンリーグ優勝は偶然でも奇跡でもなく必然の結果だった 「オリックスはなぜ優勝できたのか〜苦闘と変革の25年〜』読後感

オリックスはなぜ優勝できたのか~苦闘と変革の25年~ (光文社新書) 作者:喜瀬 雅則 光文社 Amazon 2021年シーズンは両リーグともに一昨年の最下位チームが優勝するという「奇妙な」結果となった。シーズン前は、マスコミはこぞってパはソフトバンク、セは巨…

世に駄作のタネは尽きまじ。ストーリーのネタ切れは深刻だけどね… 『ベスト・オブ・映画欠席裁判』読後感

ベスト・オブ・映画欠席裁判 作者:柳下毅一郎 文藝春秋 Amazon 映画評論家町山智浩氏と柳下毅一郎氏が「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」として映画専門誌『映画秘宝』上で繰り広げている「漫才」、『映画欠席裁判』の選り抜き版書籍化。 私は今後の文筆…

日本演劇の基礎の基礎をマンガで学んでおくことは無駄なことじゃないよ 『マンガ歌舞伎入門』読後感

マンガ歌舞伎入門 (講談社+α文庫) 作者:松井 今朝子 講談社 Amazon 日本の全て演劇の基本となっているのが、江戸以来の伝統を誇る歌舞伎。残念ながら、観劇料も高いし、演目に関してのあらすじくらいは知っていないと、台詞回しの難解さや、時代背景の理解に…

「日本の男」の一つの理想像 『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』読後感

あるヤクザの生涯 安藤昇伝 作者:石原 慎太郎 幻冬舎 Amazon 本当は去年のうちに投稿しておきたかった読書ネタシリーズその2。 主人公安藤昇氏は特攻隊員だったが、出撃する前に終戦を迎えてしまった。「国のために死ぬ」という最高のヒロイズム発現の場を失…

企業を「成功」に導くのは、表に出ない地味な部分の安定と充実 『SHOE DOG』読後感

SHOE DOG(シュードッグ)―靴にすべてを。 作者:フィル・ナイト 東洋経済新報社 Amazon 世界中のスポーツシューズ好きを惹きつけ、今やその製品は投機対象となるほどの人気を誇るのがナイキ。その創始者であるフィル・ナイト氏が会社設立から近年に至…

イタリア、もう一度行ってみたいがいつの事になるやら… 『シモネッタの本能三昧イタリア紀行』読後感

シモネッタの本能三昧イタリア紀行 (講談社文庫) 作者:田丸公美子 講談社 Amazon 何度も書いているが、今年は永年勤続のご褒美としてちょっとまとまった休みをもらえる権利があった。ここ2年ほどのコロナ禍が影響して、国内旅行ですら気軽に行けない状態で…

日本のキンは一体どこに行った? 『黄金の日本史』読後感

黄金の日本史(新潮新書) 作者:加藤廣 新潮社 Amazon 今を去ること約40年前、井上ひさし氏の超大作『吉里吉里人』が上梓され大ベストセラーになった。東北の一寒村が日本からの独立を宣言したことによって巻き起こる騒動を描いたもので、出版年の日本SF大賞…

イタリア建国の英雄は楠木正成か足利尊氏か? 『ガリバルディ-イタリア建国の英雄』読後感

ガリバルディ - イタリア建国の英雄 (中公新書) 作者:藤澤 房俊 中央公論新社 Amazon 何度か書いている通り、今年は永年勤続のご褒美休みをもらえる事になっており、コロナ騒ぎがなければ、イタリア旅行に行くつもりでいた。10年前に一度訪れて、国全体の、…