脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

世に駄作のタネは尽きまじ。ストーリーのネタ切れは深刻だけどね… 『ベスト・オブ・映画欠席裁判』読後感

 

映画評論家町山智浩氏と柳下毅一郎氏が「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」として映画専門誌『映画秘宝』上で繰り広げている「漫才」、『映画欠席裁判』の選り抜き版書籍化。

 

私は今後の文筆活動の一つの柱として映画鑑賞記を考えているのだが、映画鑑賞は、通常一本二時間ほどかかる。そしてその鑑賞の間はある程度は集中して観ていないと、内容に踏み込んだ文章は書けない。そもそも二時間も画面を見続けているのも疲れる。時間だけはたくさんあった学生時代には、映画を定期的に観るという習慣がなかったこともあり、論じるほどのストックもない。

 

というわけで、なかなか鑑賞も、鑑賞記も進まないのだが、今後の限られた人生の中で、駄作に当たって拘束される時間ほど馬鹿らしいものはない。仮に駄作だと断じて、悪口を書きまくるにしても、ではお前は秀作だと思う作品は何で、どんなところが優れているんだ!?と詰めよられたら返す言葉もない。大坂なおみがスマッシュを決めて「Come on!!」と叫ぶのと同じくらいの快感を突っ込んできたやつに味わすことになってしまう。

というわけで、他人の書いた映画評を参考に、古今の名作を見るべくチョイスと鑑賞を繰り返している。柳下氏はこの本で初めて知った方だが、町山氏の方は、アメリカに関する書物を何冊か読んでおり、その流れで、何冊か映画評も読んでいたので、大体の「人となり」は理解したつもりでおり、どちらかといえば町山氏の意見を参考にしようと「積ん読」しておいたのが標題の書。

 

自ら「漫才」と謳っているだけあって、意識してギャグを盛り込んでいたりするが、そっちの方はあまり面白くない。ただし、作品の貶し方については大いに参考になった。結局私も最初から貶す気満々なんだよな(笑)。

 

読んでいて感じたこと。「観たことのない作品ばっかり」。漫才のネタとなっているのは1990年台の後半から、2010年くらいまでの作品なのだが、まあ、見事に観たことのない作品ばっかり。賞を取ったり、ヒットしたりした作品も少なからず含まれているのにも関わらず、よくこんな状態で映画鑑賞記を文筆活動の柱にしようなんて言えたもんだ、って自分でツッコミ入れたくらい。比較の対象として引き合いに出された作品なんてなおのこと。まあ、映画を文章の題材にしようと考えて、それなりに気合を入れて観出したのは2010年代に入ってからなので、その前にあたる年代の作品は観てなくて当然ではあるが…。いわゆる古典の名作も然り、『ダーティー・ハリー』シリーズを観たのが2010年代の後半なのだから、私の「映画初心者ぶり」がわかっていただけようというもの。じゃ、最初から色眼鏡かけずに素直に観たらいいじゃん、ってのはド正論なのだが、そこは見栄を張りたいところ。ついつい知ったかぶりしちゃうんだよ。良くないって自分でもわかっちゃいるんだけどね。

 

そんなわけで、実際に観る絶対数を増やさなきゃ、鑑賞記もヘッタクレもないわ!ということだけは自覚した。

にしても、つい最近『ウエスト・サイド・ストーリー』がスピルバーグによってリメイクされたそうだが、映画業界のネタ不足は深刻だ。新作とは言っても例えば『アベンジャーズ』なんかは、結局ヒーロー大集合の顔見世興行だし、日本の『マッハGOGO』やら『シティーハンター』やらを実写化してみたりとか、もっと大所高所に立ったネタはねーのかよ?オリジナル超えたリメイクってのもあんまり聞かねーぞ!って言いたくなる。『ウエスト〜』に関してはオリジナルもリメイクも観たことがないので(まただ)鑑賞記の書きようがないんだけど…。

 

映画が衰退して、「物語」の主戦場がゲームに移るわけだ。映画の描き出す世界に魅力がないから客が呼べない→儲からない→製作費が削られる(製作費の多寡で作品の質が決まるわけではないが。さらにいうと、出演者のギャラばかりが高騰している)→作品の質が下がる→客が来ない、という悪循環に入ってから久しい。ゲームのキャラを主人公にした映画なんぞが作られて、それなりにヒットまでしてしまう始末。あーあ、お先真っ暗。

とはいえ、まだまだ映画というコンテンツには、他を圧倒するだけのスケールと魅力があるはずだ(と信じたい)。ネタだって探せば必ずあるはずだ。小説より奇なる事実はそこいらにたくさん転がっているはずなのだから。それを拾ってくる才能に恵まれた人物たちはみんなゲーム制作の方に行っちゃうんだろうな。理系の秀才たちが軒並み金融工学みたいなものに進んじまったように。要するに手っ取り早く稼げる方に行っちまうわけだ。監督やったって、制作スタッフやったって労多くして儲からないってわかってんなら、誰もなり手なんかないわね。

 

今のところ、映画業界へは上記の通りの表面的なツッコミしかできない状態だが、もっともっと映画を観て、「ちゃんとした」映画評が書けるようにはしていきたい。精進あるのみ。変に真面目な締めになっちまった。三平と同じでウケないパターンだな。