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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

関西のラグビーはいつでもめっちゃ熱い 『ラグビーが好きやねん』読後感

 

 

自身もラグビー経験者であるスポーツライター鎮勝也氏による、ラグビー愛に満ち満ちた一冊。

 

ベースボールマガジン社が誇るラグビー専門誌『ラグビーマガジン』が運営するラグビーリパブリックというWEBサイト内の、主に関西の話題を発信する「ラグリパWEST」に掲載された熱血コラムを集めたものだ。

 

関西地区のラグビー熱はおそらく日本一高い。高校では大阪府は三つも代表校を出すほどレベルが高いし、大阪のお隣、兵庫、京都、奈良の各府県の代表は毎年の花園で常に上位を占める。大学は1980年代の同志社黄金時代からしばらくは低迷が続いたが、一昨年天理大があれよあれよという間に一気に大学日本一に上り詰めた。社会人に目を転じれば、1980年代に同志社の黄金時代を築いたメンバーの主力が大挙して入団した神戸製鋼が1990年代はまさに無敵という状態だった。7年連続の日本一は、新日鐵釜石と並んで未だ破られていない記録である。

 

神戸製鋼以外にも社会人チームとしては、トヨタ(本拠地が愛知県なのでちょっと微妙だが)、ホンダ、NTTドコモ近鉄などがひしめいているし、大学も京産大や大体大など独特のチームカラーを持つチームが多い。

 

この書にはそんな関西の地に「現在(執筆時)」居を構えている現役選手、往年の名選手、そしてこれから羽ばたこうとするホープたちが次々と登場する。登場人物たちにとって、「関西」という地がどのような役割を果たしたのかが具に描かれているのだ。

 

日本代表として世界と渡り合うまでになった選手も登場すれば、裏方に徹して、グラウンド外でfor the teamに勤しむスタッフも紹介される。指導者としてそれぞれのステージでのNo.1を目指す人も、それこそ15人のメンバーすら集まらないながらも、ラグビーをしたいという熱意だけは日本一のチームにだって引けを取らない人物たちも描かれる。

 

全ての登場人物に共通している言葉こそが「ラグビーが好きやねん」なのだ。

 

ボールを持って、ゴール目掛けて全力で走る時の爽快感、相手とぶつかり合う時に感じる血のたぎり。スクラムでの痛みと一体感、ギリギリの勝負に臨んでいる時のヒリヒリとした緊張感。勝っても負けても、試合後はお互いを讃える気持ち。「理屈」は色々捻り出せるが、全てひっくるめてラグビーというスポーツの魅力だ。私自身、これ以上の魅力を持っているスポーツは思い浮かばない。だからこそ、ヘボながら30年以上もこのスポーツを続けているのだ。

 

ところで、全てのラグビー経験者がいい奴かといえば決してそんなことはない。私自身、高校時代のラグビー部の連中は大嫌いだった。一応進学校だったのに授業中は睡眠時間。テストの出来なんか最悪の癖(真面目なお話、おそらく100点満点でヒトケタの得点ってのが常態化してた)に推薦で難関私大にすんなり入れることに理不尽さを感じていたし、私大の推薦にも引っかからないどっちつかずの奴らは、そこそこ勉強のできるやつに難癖つけることだけが生きがいみたいなものだった。にしてもたとえば東大を狙っているような「超一流」にはイチャモンをつけない。変なところだけ知恵が回ってたし、一応公立の名門校という建前だけは守る気持ちはあったようで、カツアゲとか暴力沙汰に及ぶことはなかったが、正直同じ高校出身だと名乗って欲しくないクズばかりの集まりだったような気がする。

 

少なくともこの本に登場する人物には、嫌な奴やクズはいない。純粋にラグビーが好きで、その時々で己に与えられた役割を目一杯果たす、いい人ばかりだ。現実に即したコラムでありながらある種の夢物語でもあるが、いいじゃないか、ラグビーやってる奴を手放しでホメる本が1冊くらいあったって。実際に私の高校時代のラグビー部のようなひねくれ者たちはむしろ少数派で、大概いい奴だったというのは私の実体験でもある。

 

読み終わって、久しぶりに体を動かしたい気になった。一足飛びにいきなりラグビーに臨むには少々失礼な、鈍り切ったカラダを少しでも臨戦体制に近づけたいがためだ。試合で汗を流した後のビールの旨さを久々に味わってみたい。