Kindleが定期的にやっている電子書籍まとめ買いフェアの対象となっていたので買い求めた一冊。本屋の店頭で大々的に宣伝されていたので気にはなっていたのだが、どうせ映画とのタイアップ企画の一環、往年の「角川商法」に則ったプロモーションだろうと高を括ってしばらく溜め読していた。
しかし、何の気なしに読み始めたらページをめくる手が止まらなくなった。
主人公たちは題名通り6人の大学生たち。急成長時のYahooとかGoogleを手本にしたと思しき、SNSの運営会社スピラリンクスの最終面接に残ったメンバーたちであるという設定だ。当初はこの6人全員の内定があると思わせる展開。スピラリンクスは超人気企業であり、入社早々からの高給も約束されているとの設定で、6人それぞれがいかにもこの企業に入れそうな魅力の持ち主たちであることが示される。
しかし、物語はここで急展開。6人全てに内定が出るどころか、6人のうちから一人だけを、それも6人の合議によって選ぶという方式に変えるということが企業から通知されたのだ。まず、この設定がかなりぶっ飛んでいる。「普通の企業」であればまず考えられない方法だが、何が当たるか、仮に当たったところでたった一つのきっかけでガタガタと崩れ去る現代の状況下の、しかも最先端企業とくれば、こんな破天荒な選考方法を取ってもおかしくない、と解釈して読み進めていく。この方式変更により、「仲良く」内定をもらおうと努力していた6人には亀裂が入る。内定を取るためには他の5人の支持を得なければならないが、自らも入社したいと願っている人物たちからどうやって支持を得るのか?
私は、大学時代の専攻の教授が研究テーマの一つにしていたゲーム理論の「囚人のジレンマ」てやつを瞬間的に連想していた。お互いに協調した方がメリットがあるとわかっているのに、抜け駆けをして自分だけ利得を得ようとする人が出現し、結果的にお互いのデメリットが大きくなってしまうという理論だ。しかもこの場合協調することが必ずしも自分自身のメリットとはならないわけだから、余計にややこしい。
そんな状況下で、いよいよ最終試験が始まる。6人で討議して最終的に1人を選び出すというもので、人事部の人間は一切関与せず、ただ別室で会議室に設られたカメラで会議の模様を眺めているだけ。そしてその会議室にはある「爆弾」が仕掛けられていた……。
唐突ではあるがストーリー紹介はここまでにしておかないと、あとは何を書いてもネタバレになってしまう。「爆弾」がどんなもので、それが6人の大学生たちの行動にどのような影響を及ぼし、最終的に誰が内定者に選ばれたのかについては是非とも本文をお読みいただきたい。なかなかに考えられた展開はミステリーとしての魅力がたっぷりと詰め込まれている。そして何よりも各候補者たちの「後日談」もぜひ読んでいただきたい。人間には多様な面があり、一つの事象だけを切り取って判断を下すのは間違いなのだということがよくわかるということだけ記しておくことにする。
そして、ストーリーとは別に就活というもののはらむ大きな問題点にも気付かされた。先述の通り一人の人間は決して一つの事象でなど語ることのできない存在ではあるが、就活というのは一つだけとは言わないまでもその人間のごく限られた面だけを強調する行為であるということだ。企業側も、高々20数年の人生しか歩んでいない人間の底の浅さなど百も承知で、それでも似たような「側面」だけを切り取って評価する。限られた時間と人員での選考であるが故、仕方のない一面もある。それでも「新卒」という就職戦線においては最も価値の高いシーズン(「新卒」の価値が高いという風潮にも問題の一端はあると考える)を不慣れな「面接」や「小論文」に費やさねばならず、結果的に学業云々よりもバイトの経験やら部活、ボランティアの活動なんかをアピールするしかない「就活」ってのはどこか歪んでいる気がする。
かくいう私自身も、アピールできたことといえばラグビー同好会の名ばかりバイスキャプテンだったことぐらいしかなく、面接についても度胸という名の無謀さで「出たとこ勝負」で挑んだ結果、同じような経歴を持つ有象無象の群れに飲み込まれ、志望した企業には見事に振られ続け、「出たとこ勝負」が上手くいった企業に就職し、それでもなんとかその企業に自分を合わせようと努力はしたが、結局どうしても奉職した企業と自分の価値観とがマッチしないということに、勤続30年を超えてようやく気づき、自分が本当に進みたい道への転身を決意した。
企業に勤務した経験から得た知識、何より収入は得難いものであったし、随分と助けられもしたが、それでも自分の価値観とは違う基準で評価されることには最後まで馴染めなかった
まあ、そういうことも全て飲み込んだ上で臨むのが「就活」というものなのだ、と言われて仕舞えばそれまでなのだが。今も昔も優秀な人間たちは私のような「青臭さ」をヒョイと乗り越えて、いろんなことにうまく折り合いをつけて得られる利得を最大化していくんだろうな。読後少しそんな切なさに囚われた。







