脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

読む精神安定剤として常備しておきたい一冊 『人生が楽になる心の「立ち直り」術』読後感

 

 

こういう本を手に取ってしまうときは、何しろ心が疲れている時だ。年末年始に仕事のミスが続き、落ち込んでいる時に、人事異動が発令され、「え、あんな奴が管理職?」みたいな驚きが少なからずあって、プライドだけは高い私の心は疲弊の真っ只中にあった。そんな時に本棚の片隅にあったこの本に目が行った。吸い寄せられるように引っ張り出し、ページをめくってみた。

 

正直、この手の本は大体内容は同じようなことが書いてある。「普通」の会社に勤めている限り、よほどの大きなミスがないかぎり簡単にはクビになることはない。で、大体このテの本を手にするような人は会社の存続に関わるような大事には関われていない人なのだ。だから、所詮自分の失敗なんぞ大したことではない、と思って、うまくやり過ごしましょう、ってのが骨子。後は文体の読みやすさとか、譬え話の巧みさの勝負。

 

歌人にして医師でもあった斎藤茂吉を父に持ち、私が最も敬愛する作家である北杜夫氏を弟に持つ「モタさん」こと斎藤茂太氏は少なくとも「読ませる技術」には長けた方である。小難しい言葉を連発するのではなく、説教臭くもならず、「こんな考え方もあるよ」、「人生、仕事だけじゃないよ」、「どうしたって落ち込んじゃうことってあるよね」ってことをユーモラスに書き綴っている。

 

詳しい内容については是非とも本書をご一読願いたいが、いわゆる「楽しみ」をたくさん持ち、時にはその楽しみの中に逃げ込んでしまうことを推奨していることが私に取っては一番の「救い」。

 

私は自分にとって興味のあるものを追求していくことが楽しみ。追求によって得られた知識や情報が今の仕事に役立つのなら、それは偶然にして幸いなこと。役に立とうが立つまいが、自分の知的生活のスタンスは変わらない。

 

会社のスタンスに合わせ、会社の業績に寄与するような知識やスキルで「出世」していくのも自己実現の一つではあるし、そういう人間の存在も否定はしない。否定したところで、実際に存在してしまっているんだから、文句のつけようがない。

 

過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる、とは言い古された言葉だが、重い真理でもある。個人ですら変えられないのだから、その集積である「会社」なんてものはましてや変えられるはずもない。だから、適当に付き合って、その付き合いの中で得られる利得だけを享受し、後は徹底的に離れていればいいのだ。文字通り「ビジネスライク」に付き合っていけば良いのである。

過去には「会社の仕事を頑張ることが人間的な向上につながる」という教えを受けてきたし、実際に「金八先生」のごとく、その考えを説いて私を無理やり頑張らせようとした勘違い上司もいたが、頑張ったところで、今更会社の中の地位が上がるわけでもないし、人間としての評価は会社の「地位」とは全く無関係だ。

こういう考え方はある意味「負け犬の遠吠え」そのものだが、そういう考えに囚われても仕方ない、だけどどこかで自分のプライドを満たす行動をしよう、幸せだと感じる時間を作っていこう。自分の人生なんだから、自分が満足できればそれでいいんだ、ということを、肩肘張ることなく提示してくれているのがこの本なのだ。

希望通りの精神安定剤的な「効果」は十分得られたが、読了した次の日からまた目一杯目先の仕事に追いまくられる日々がスタートしてしまった。しばらくは手元に置いて、折に触れてパラパラとページをめくって効果を継続させていかざるを得ない。