USB-HDD録り溜め腐りかけ作品鑑賞シリーズ。何の予備知識もなく観たこの一作は、恐らく初めて観たことになるフィンランド作品。一人の老人の恐るべき執念を描いていた。
導入部分で「SISU」という言葉の意味と、舞台が第二次大戦末期のソ連とナチスドイツにメチャクチャにされてしまったフィンランドであることを説明した後、一人の老人が荒涼とした原野で金塊を掘り当てたところから物語は始まる。川で身体を洗うシーンでこの老人には大小様々な傷が刻まれていることが示され、ただ者ではないことが暗示される。
掘り当てた金塊を手に、愛馬に乗ってトボトボと人里へと向かう老人。そこで出くわすのが撤退中の20名ほどのナチスの一団。焦土作戦を展開中のこの一団にはフィンランドの女たちが捕虜として囚われており、性的虐待を受けていることも暗示されている。要するに極悪非道の一団であるという位置付け。この一団は老人を見逃すが、5名ほどの後続部隊はきっちりと呼び止めて身体検査し、老人が金塊を持っていることに気づいてしまう。当然行き掛けの駄賃とばかりに金塊を奪おうとするのだが、この老人、実はロシア兵を300名以上殺害したというフィンランド軍のレジェンド、アアタミ・コルピという人物だった。瞬く間に5名の兵士を倒したコルピだったが、その際の銃声を聞きつけた、先ほどの先行部隊が戻ってくる。愛馬に跨って走り去ろうとしたコルピを待っていたのは地雷原。愛馬を吹っ飛ばされ、自身も重傷を負ったコルピをナチスが追いかける。この追跡劇での攻防の結果コルピは金塊を奪われ、ついには縛り首にされてしまうのだが…。
このオッサン、とにかく絶対に死なないのだ。一晩縛り首にされたままだっつうのに、窒息もしなければ首の骨も折れない。稀に絞首刑にされても死なない死刑囚はいるそうだが、その際でもせいぜい吊られる時間は20分程度。流石に荒唐無稽だと感じざるを得ないが、ここで死なないところが「SISU」の「SISU」たるゆえん。ちなみ「SISU」とは、絶体絶命の危機に陥っても絶対に諦めない心のこと。そしてここから「人間ターミネーター」というべきコルピの反撃が始まる。どのような反撃だったのか、そしてコルピの不死身ぶりはどんなもんなのかが、この作品の最大のキモとなるので、これについては是非とも作品をご覧いただきたい。
何しろ、死なない。先述の縛り首を始め、どう考えたって生きてねーだろ、って場面が数々現れ、その全てをコルピは乗り越えてしまう。リアリティーという部分ではかなりの無理筋なのだが、それこそがこの作品の味わい。そういうものだと思って観続けるしかない。その覚悟さえ決まってしまえば、コルピの執念はそれなりに楽しめる。