脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

スペシャル感はそれなりにあったものの、ツッコミどころも多々あった作品 『七人の秘書 THE MOVIE』鑑賞記

 

TV朝日のドラマの映画化作品。

 

表向きは企業重役の秘書として働きながら、裏では企業や大物政治家の暗部を暴き、制裁を加えるというそれなりに考えられたフォーマットに、木村文乃菜々緒広瀬アリス大島優子といった人気者たちがキャスティングされているのだから、テレ朝としては「ヒットしてもらわなければならぬ」作品。一応映画化もされたのだから、テレ朝の狙いは当たったものとみなしてよかろう。

 

連ドラ作品の映画化の場合、レギュラー作ではなかなか実現し得ないスペシャル感がキモとなる。今作のスペシャル感を醸し出していたのは、まずキャスト。

 

信州を牛耳ろうとする悪の親玉九十九道山に笑福亭鶴瓶。道山と確執があり秘書軍団のリーダー千代(木村文乃)との恋愛模様も描かれる緒方航一に玉木宏、七菜(広瀬アリス)と結婚する予定が、挙式寸前に失踪した九十九二郎に濱田岳。誰をとっても主役を張れるだけの俳優を贅沢に起用している。

 

物語は七菜が仲間たちに結婚報告をするところから始まる。相手はマッチングアプリで知り合った長野の雷鳥牧場の主、九十九二郎。雷鳥牧場は長野県に一大勢力を誇る雷鳥グループが経営しており、二郎はその次男。九十九家の屋敷で行われる、結婚式に出席するために千代ははるばる長野の山奥に出かけていくのだが、途中山道を徒歩で行くところがいかにも不自然。いかに旧家で山奥にあるとはいえ、財閥の家なのだから、そこまでの道は当然整備されていて、車で向かうのが自然だと思うがね。まあ、この山中のシーンで千代が航一と出会うという演出なので仕方がないが、不自然さは残った。

 

結婚式に出席したはいいが、花嫁の七菜を残して、新郎の二郎は失踪。しかも雷鳥牧場が火事になっているという一報が入り、結婚式どころではなくなる。ここでも一つ不自然さが。七菜も千代も結婚式のドレスのまま、徒歩で牧場に向かう。普通は手早く普段着に着替えて、自動車なり、スノーモービルなりに乗っていくと思う。ある程度のコミカルさを意図した演出だったとは思うが、明らかにリアリティーを欠いてしまっていて不自然さだけが残った。

 

で、火事の原因はわからず、二郎も失踪したまま。失意の七菜もさることながら、牧場の従業員たちも路頭にまよう羽目に。そこに救いの手を差し伸べたのは雷鳥グループのドン九十九道山。しかし救ったとは名ばかりで、劣悪な条件下で過酷な労働を強いる職場に放り込んだだけだった。こんなことを端緒に秘書軍団が調査を進めていくうちに道山のドス黒い野望が明らかになっていき、最後には秘書軍団が怒りの鉄槌を下す、といういつものお約束パターンに入っていく。ただし、最終盤にはもう一捻り加えてある。この辺はスペシャルならでは。

 

終盤戦の大立ち回りは、道山が雷鳥牧場の跡地に複合リゾート施設を建設することを発表する場から展開するのだが、その立ち回りの前に、雷鳥牧場の元従業員たちが道山に詰め寄るシーンも不自然。警備のヤクザものたちに事前に叩き出されるのが関の山。その辺は秘書軍団がうまく対処したのだという説明も成り立つが、従業員たちが乱入してきた時点で警備のヤクザものたちが有無を言わさず排除するというのがギリギリのリアリティー。従業員たちが口々に道山の悪行を言い切ってしまうまで待っているなんてことはあり得ない。

 

で、大立ち回りのどさくさで道山は数人の護衛と共に車で逃亡を図る。これを不二子(菜々緒)らがスノーモービルで追跡し、車の前に回り込むのだが、逃亡に使った車は、スノーモービルの一台や二台、ぶっ飛ばしてしまいそうな頑丈さだ。それなのに道山一味は車から降りて徒歩で逃走することを選ぶ。仮に逃げおおせたとしても、酷寒の信州の山の中では凍死する危険性の方が高いというのに。

 

私の見方がヒネクレに満ちたものであることは認めるが、あまりにも現実から乖離してしまうと、ストーリーに集中できない。キャストもストーリーそのものの出来も悪くなかったとは思うので、ちょっとその辺が残念だった一作。