アメリカ映画界の船越英一郎ことニコラス・ケイジが「自分自身」を演じたコメディー映画。
つい最近まで船越氏は『テイオーの長い休日』という、やはり自分自身を演じたドラマに出演していた。船越氏演じる2時間ドラマの帝王熱護大五郎が、自身が過去に演じたキャラクターに成り切って、いろんな事件を解決していく、という筋立てのこのドラマ、なかなかに面白かった。また、レンタルDVD屋でこの作品の煽り文句を見て、業界での立ち位置が似通っていると、周りの人間が考えることも似通ってしまうのだろうか?そんなことが頭をよぎり、ニコラスがどんな「自分自身」を演じるのかに興味を惹かれて借りてきて視聴開始。
ニコラスはかつては多数のヒット作に出演していたが、ここ数年はヒット作にも恵まれず、自分が満足できる役のオファーも途絶えていた。おまけに私生活では夫婦関係が破綻しかけており、娘からも反抗されている。娘からの反抗はともかく、ここ数年のニコラスは結婚しては短期間で離婚をするというわけのわからん行動を繰り返しているので、そこまで踏み込んでパロディーにして欲しかった気がするが、本人役とはいえ、あくまでも「架空」のニコラス・ケイジを演じているというテイなので致し方なし。本人もそこまでリアルにパロって欲しくはなかっただろう(笑)。
出演作はなくても派手な生活をやめられないニコラスには多額の借金があった。そこに舞い込んできたのが、多額なギャラが保証された、スペインの大富豪の催すパーティーへの出席という「営業」。俳優としての本分に反すると一度はオファーを断ったものの、借金取りからのプレッシャーには勝つことができず、渋々ニコラスはパーティー会場であるスペインのマヨルカ島へ向かう。
マヨルカ島で待っていたのは、熱狂的なニコラスファンである大富豪ハビ。ニコラスのファンであるだけでなく、映画を深く愛していることが窺い知れるハビとニコラスは意気投合。深い友情で結ばれることとなる。
ところがハビの従兄弟は違法薬物の取引を取り仕切る、暗黒街の顔役。違法薬物の取り締まりを厳しくしようとしている政治家の娘を誘拐して、選挙への出馬を辞退させようと画策していた。娘の奪還と組織の壊滅を目指すCIAがニコラスに接触し、スパイとしての活動を要求してくる。ということで巻き起こるさまざまな騒動を、アクションスター、ニコラスがどのような「演技」で解決していくか、というのが大まかなストーリー。先に挙げた熱護大五郎とは違い、特定のキャラクターに「変身」するわけではないが、これぞB級映画の大御所とでもいうべき、チープながらスペクタクルなシーンが連続する後半部分は悪くない仕上がりだった。
こういう、「最後は収まるところに収まる」というストーリーを演じさせた時のニコラスは流石に安定感を感じさせる。逆にいうと、ニコラス主演の映画というのは収まるところに収まるという結末が予想されてしまって、興醒めしてしまうことが少なくはないのだが。