脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

歴史の波に翻弄され続けて磨かれた魅力的な街たちのガイドブック 『フランス 26の街の物語』読後感

 

 

 

個人的には、いつの間にか始まり、いつの間にか終わっていたという印象だけが残ったパリオリンピック。もっともこれは私の個人的な事情による。すなわちオリンピックがちょうど佳境を迎える頃に合わせたようにコロナに罹患してしまい、体調不良が続いたので競技をほとんど観ることができなかったのだ。本当なら、いくつかのスポーツについて記事を書く予定でもあったのだが、正直、それどころではなかった。結果的には金メダル獲得数は米中に次いで多い20個獲得したし、合計で45個ものメダルを獲得したので、日本選手団としては大いに誇って良いと思うのだが、一番思い入れのあるラグビーは惨憺たる結果に終わってしまったし、卓球の開催時には熱出して寝込んでた。その他のスポーツに関しては、勉強しようとしている間に、とっとと別の人に書かれてしまった。

 

悔しいので、今更ながらではあるが、フランスについてちょっと勉強しようと思って衝動DLしたのが標題の書。大学時代の第二外国語はフランス語だったし、パリに2泊ほどしたことはあるし、少しワインについても齧ったことがあるので、全く馴染みのない国ではないのだが、それでも知識の量は圧倒的に不足しているので、少しでもフランスという国に関する知識を得ようというのがこの一冊を読む目的だった。

 

ところが、この本、思いの外と言っては失礼だが、面白い一冊だった。紹介されている街たちが地政学的にどんな場所に位置しているのか、から始まり、そこに位置しているが故に、イングランドスコットランド、ドイツといったライバル国たちとの争いの中でどのように支配されて、最終的にフランスの領土となったのか、宗教はどんな影響を及ぼしたのか、自然環境が変化したことによって、街の重要性にどのような変化が生じたのかが分かりやすく紹介されていた。街が現在の姿に至るまでにどんな歴史を辿ってきたのか、そしてその歴史が住んでいる人々にどのような影響を与えて、現代に至る「お国柄」を形成したのかが簡潔にして当を射た文章で書き記されているのだ。

 

フランスの中心は、政治的にも文化的にも首都パリであることは間違いないのだが、どこの街にもパリに勝るとも劣らぬ歴史があり、また、街によってはパリよりも隆盛を誇っていた時代があったということに改めて気付かされ、驚かされた。例えばアヴィニョンという街は、一時期カソリック教皇がおり、信仰の中心地であったという歴史を持つ。当然その時代には世界中から富や物資や文化や知識が集中する、世界の中心地だったわけだ。

また、マルセイユに停泊した船舶から乗組員によってばら撒かれたペスト菌がヨーロッパ中で猛威を振るい、屍の山を築かせたという史実も興味深かった。ちょうど、横浜沖に停泊した豪華客船によってもたらされたコロナウイルスのいくつ目かの亜種に冒された私にとっては余計に。

 

もしもう一度訪仏の機会があり、パリ以外の街にもいくようなことになれば、ぜひとも再読したい一冊だった。