脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

いい映画の方程式通りのコメディ 『インターンシップ』鑑賞記

 

久々の映画鑑賞記は、録り溜めHDDで半分腐りかけていた標題のコメディ。主演を務めたのは脚本・監督も兼ねているもあるヴィンス・ヴォーンオーウェン・ウィルソンのコンビ。実話を元にしたストーリーで、日本ではビデオスルーされた。

 

ビリー(ヴィンス・ヴォーン)とニック(オーウェン・ウィルソン)は時計販売会社の中年やり手営業マン。ある日、売り込み先に行った得意先から、自分達が所属する会社が倒産したことを知らされる。

 

冒頭からいきなり無理矢理な展開。普通、社員に何にも告げずにいきなり会社を消滅させるなんてことはないはず。訴訟社会のアメリカなら間違いなく訴えられて、おそらくは経営者不利な判決が下るはず。なにせ、経営者はのんびりと余生を過ごすためにリゾート地に移住する計画まで立ててまでいるのだ。お上には楯突かないことを小さい時から躾けられている日本人でも、裁判所に駆け込むような設定だ。

 

この設定に、無理矢理だというツッコミを入れられないように「実話を元にした」という解説が入っているのではないか、と勘繰りたくなるくらいだ。

 

で、途方に暮れた二人は、世界一の検索エンジンGoogleインターンシップに応募する。応募資格が「大学生」であることから、オンラインの大学の学生であると身分を偽り、オンラインでの面接を受ける。このオンライン面接のやりとりが、一つのくすぐりどころなんだろうが、今ひとつ切れ味の鋭さにかけていた気がする。

 

採用担当の責任者は当然面接の時点で彼らを振るい落とそうとするが、ライルという担当者が一人だけ「多様性」を謳うGoogleには異色の存在が必要だとして彼らの採用を主張。インターンとしての採用が決まる。

 

この辺は、巨大企業Googleに少し阿っている感もある。Googleの懐深さを描き出したいのだろうが、相当援助してもらったんだろうな、って苦労がしのばれてしまう。映画制作って大変だなぁ…。本筋に関係のない感慨を巻き起こさせながらも、物語は進行。

 

ここで、以前紹介した『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方』でいうところの第一の試練が主人公二人に訪れる。インターンたちは数名のチームに分かれてさまざまな課題をクリアするというミッションを与えられるのだが、年齢も高く、言動も明らかに周りから浮いていた二人には誰も寄りつこうとしない。結局はやはり他のチームに入れなかった3人の落ちこぼれと、採用を強く押したライルの6人で「チーム・ライル」を組むことになる。

 

この落ちこぼれで、目的意識も行動もバラバラなチームが、いかにして一体感を醸成させるかまでが、第一の試練。主人公コンビの方法は恐ろしくアナログ。イマドキ日本の会社でもこんなことはやんねーぞ、という方法なのだが、デジタルの最先端企業とはいえど、結局一番大切なのは人間同士の結びつきで、その結びつきを強めるためにはある程度「腹を割る」ことが必要なのだということが、字幕に書かれていたかと錯覚するくらい明白に伝わってきたし、私自身はこういう展開、決して嫌いではない。どんな方法だったかは是非本編をご覧いただきたい。

 

チームを一体化することに成功した「チーム・ライル」の快進撃が始まる。エリート然としたライバル、グレアムが率いる一流大学の学生ばかりのチームを相手に、トップ争いを演じることになる。

 

僅差で競り合う両チームに残された課題は二つ。ここで前出の『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方』でいうところの第二の試練(絶望的な失敗)が発生する。ビリーの初歩的なミスで「チーム・ライル」のラス前課題の得点が0になってしまったのだ。このミスをどう解決して逆転するのかが、ラストまでの見どころ。結果的にはハッピーエンドに終わるのだが、何をどうしたら逆転につながるのかは、こちらも是非とも本編をご覧いただきたい。

 

結論は中盤で感じた通り。「デジタルの最先端をいく企業だからこそ、人間同士のつながりが重要だ」という、この一点に尽きる。会社はあくまでも仕事の場であって、恋愛関係などは望ましくない、という暗黙の了解を覆す、3組のカップルの恋愛模様が描かれることも、この主張の隠し味になっている。

 

というわけで、実にもって『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方」に書かれていた公式に忠実な作りの作品だった。あまりにも忠実にすぎたために評論家の評価は低かったようだし、日本では上述の通りビデオスルーであったりもしたのだが、興行成績は決して悪くなかったそうだ。凝った作品ではなかったが、スポ根モノ好きな私にとっては、見終えたあとにそれなりの感動をもたらす作品ではあった。まあ、映画鑑賞の上級者に言わせれば、言いたいことが明白すぎて幼稚だ、ってことになるんだろうとは思うが。