脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

結末の苦さは「程よかった」ものの… 『地獄の7人』鑑賞

 

USB-HDD録り溜め腐りかけ映画鑑賞シリーズその6は、戦争を題材にした作品の中では名作の誉高い標題の作。正確にはベトナム戦争を描いた戦争映画ではなく、ベトナム戦争後、ベトナム軍の捕虜になっていた米兵を救出する作戦を描いたものだ。

 

ジーン・ハックマンが息子のフランクを救おうと奮戦する陸軍大佐ローズを演じる。

 

捕虜たちがラオスに送られて、重労働に従事させられているという情報を掴んだローズ大佐は、かつてベトナム戦争に参加していたことのある5人の仲間と、現役の軍人ながらまだ実戦を経験したことのないスコットを加え7人でラオスまで乗り込むのだ。なお、スコットの父もやはりベトナムでの戦闘中に行方不明になっており、スコットは父救出の一縷の望みを託してこの作戦に参加したこととなっている。

 

作戦を遂行するための訓練を積む過程で、叩き上げの軍人5人と、エリート然としたスコットは対立するが、スコットの父が囚われているかもしれないことを知った軍人5人はスコットを仲間の一員として「正式」に認める。この過程が最初の試練。

 

終盤、越えることが極めて困難な試練は、当然捕虜救出作戦。手練れが揃っているとはいえ、たった7人で、敵が何人いるかもわからない捕虜の収容所に乗り込むなんざ、無謀もいいところだが、まあ、映画ゆえにその辺はうまく取り繕われてはいる。

 

激戦の中、ブラスター、セイラーの二名が死亡。ローズ大佐たちは二人の死を乗り越えて、収容所にいる捕虜たちを救出するのだが…、結末の前には実に苦い事実が待っている。ほぼほぼネタバレになってしまっているが、これは実際に作品をご覧くださいとしかいえない。完全な予定調和でなかったことで、アメリカ人のヒーローは全ての難事を解決して、憎々しいベトコンどもを思うさま成敗しちゃうんだもんねー、軍全体としては負けたけど、個別の戦いなら負けないやつはたくさんいたんだよーだというアメリカ讃歌、戦争讃美になってはいなかったことだけが救い。

 

そもそもの問題として、こういう救出劇というのは、思いっきり無理がある。果たして、捕虜の救出というアクションは「正しい」ものなのか?結局は自分の息子を救いたいという父親のエゴじゃねーかよ。趣旨に賛同して参加してくれた仲間たちや現地のアメリカシンパの命を危険に晒すことになる。何より襲いかかってきた敵は、正当防衛の名の下に全て殺しても良いというお墨付きを最初から与えてしまっている。アメリカ人一人の命は、ベトナム人数千人よりも重いという思想がもろに見えてしまう。

 

そうした無理やりさと、救出された捕虜の家族が涙を流して再会を喜ぶ姿を見せて、戦争というものの痛ましさ、愚かさを描いているのだという穿った見方もできなくはないが、アメリカの敵は徹底的に叩いて良いという根本思想の方が色濃く出ていると思う。