脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

とりあえずトム・クルーズのアクションとキャメロン・ディアスのファンは満足できたであろう一作 『ナイト&デイ』鑑賞記

 

 

2010年の米映画。

 

2001年の『バニラ・スカイ』ではややサイコがかった女を演じ、劇中で主人公トム・クルーズの顔面に深刻な傷を残したキャメロン・ディアス。今作では謎の男を演じるトム・クルーズに散々あちこち引っ張り回されて、死ぬような思いを何度もさせられながら、最後は心まで奪われてしまう役を演じている。

 

この作品も以前に紹介した『「おもしろい映画」と「つまらない」映画の見分け方』の分析方法に従って鑑賞してみたいと思う。

 

この作品は、一言で言ってしまうと「ストーリーテリング」の「テリング」の方に最重点が置かれてしまった作品だ。すなわち、物語による感動よりも演者の躍動という「魅せ方」の方に重きが置かれているということである。派手なアクションを見せまくるトム・クルーズと、その横でアタフタしながらも美しいキャメロン・ディアスを存分に鑑賞する作品だということだ。

 

ストーリーは典型的なスパイアクション。とある秘密装置を持ち出した腕利きのCIAエージェント、「ロイ」(トム・クルーズ)に空港で偶然関わりあってしまった「ジューン」(キャメロン・ディアス)が、ロイと共に、その秘密機器を奪い取りにくる様々な悪の勢力たちとの戦いに巻き込まれる。いろんな敵が、手を変え、品を変え、時、所を問わずに仕掛けてくる攻撃を、ロイとジューンのコンビがかわしにかわしまくって、逃走に逃走を重ねるドタバタがずっと続く。

 

この逃走と、それにまつわる闘争(下手な洒落、失礼)が最大の見どころ、というより、それしか観る場面はない。しかも米映画にありがちなご都合主義、すなわち相手はマシンガンで、それこそ蟻の這い出る隙間もないほどの弾幕を張るのに、メインキャスト二人には掠りもせず、逆に、素人のジューンが撃った弾は全て相手を倒すわ、相手が倒れた拍子の偶然近くにあったナイフが相手の心臓に刺さってしまうわ、どう考えてもあり得ない展開。

 

『「おもろい」映画〜』の分析方法に則ると、主人公には最初に越えるべき試練が訪れ、最後に、乗り越えることが不可能な試練が訪れて、それをなんとか乗り越えるところに「感動」が生まれるそうだ。そういう意味で言うと、この映画の主人公ジューンには「最初の試練」ばかりが散々に襲いかかることになるのだが、自分で努力した結果ではなく、ロイというナイト(ちなみに題名のナイトはNightではなくKnight、つまり騎士の意。あらゆる場面でジューンを守るロイを騎士になぞらえると共に、ちょっとした種明かしにもなっている)に救出されるという展開ばかりなので、感動するよりは「んな都合のいいことばっかり、実際に起こるわきゃねーだろ!!」というツッコミを入れざるを得ないのだ。

 

で、最後の最後に乗り越えるべき最大の試練は訪れはするのだが、今までのアクションシーンとほとんど変わらない展開。もうだめだ、絶体絶命、と思った瞬間に、見事にナイトが救いに来て、首尾よくジューンを救い出して、何度も窮地を救ってくれたロイとジューンは結ばれて、最後は平安なリゾート地で一緒に過ごす姿が描かれて、めでたしめでたしなのだ。

 

これも現実的なツッコミを入れてしまうと、いわゆる「吊り橋効果」を大げさに描いただけじゃねーかよ!散々ドキドキさせられたんで、そのドキドキが恋慕の情に見事に転化されたというわけだ。しかし、ドキドキの度が過ぎて、「普通」の女性なら、毎日毎日、身の危うい思いをするのは嫌だ、と思うんじゃねーの?とも思わされた。

 

まあ、そういう度を越した、生死に関わる危険よりも愛情の方が優ったということで、一つの大きな危機を乗り越えたのだ、と解釈できなくもないが、ちと、小さすぎる危機のような気が、個人的にはする。トムとキャメロンのラブラブシーンはフォトジェニックではあるので、見せ方としては悪くはなかったが。