何度か書いている通り、私の義姉はベトナム人だ。当家の最高権力者様、世間的にいうところの女房の兄に5年ほど前に嫁いできた。義兄が働いている工場に、彼女が技能実習生として入ってきたことが馴れ初めだとのこと。今では娘が一人生まれ、当家にとっては姪っ子に当たるこの女の子は現在の当家にとって最高の癒しをもたらす存在だ。なお、来年には第二子が誕生する予定で、姪っ子ちゃんには早くも赤ん坊返りの兆候が見られる。昔は混血児といえばいじめの標的になりやすいという印象があったが、幸にして義兄一家が住む自治体は外国人の受け入れに積極的で、国際カップルも多く、混血児も多いので、混血児だからということでいじめに遭うことはなさそうな雰囲気ではある。
長い前置きとなったが、以上のような状況により、今やベトナムは私にとっては一番身近な外国となった。何しろ、いきなり親族にベトナムの方が出現したし、血のつながりはないとはいえ、彼の国に親戚が多数存在することとなったからだ。
とはいえ、今までの生涯において全く関係のなかった国ゆえ、正直なところベトナムと言われても全くイメージがわかなかった。せいぜい頭に浮かぶのは生春巻きを筆頭とした食い物関係と、最もポピュラーな交通手段がスーパーカブで、今や日本のマニアたちがビンテージスーパーカブを探しにベトナムへ行くことすらあるという非常に瑣末的な情報だけだった。
しかし、この国の歴史は実に複雑だ。欧州各国が世界進出を競っていた頃にはフランスの統治下にあったし、ベトナム戦争では超大国にして世界の警察を名乗っていたアメリカを打ち破り、国土から追い出した。そして何よりこの国に多大な影響を及ぼしてきたのは地続きの超大国、中国の存在だ。中国は自国の国力が高い時は力づくで支配しようとしてきたし、勢力が分散している時はさまざまな勢力が親交を結ぼうとしてきた。ベトナムの方からも、主権争いで劣勢に立たされた勢力がその時点での中国の最大勢力と誼を通じて状況を逆転しようと画策するなどしたため、結果として中国の介入を招くようなこともあったようだ。今でも、ベトナム人の名前は中国風で、漢字で書き表すことも可能だ。現在の政治体制も共産主義で、共産主義体制確立以降に中国が辿ってきた「歴史」を見事になぞるような動きを見せているそうだ。
著者によれば、現在のベトナムは、豊かになりきれないうちに、衰退の兆しである少子高齢化社会になりそうなのだそうだ。義姉の実家は外食産業を営んでおり、彼の国においては富裕層と言える家柄だそうなので、将来的に姪っ子ちゃんはベトナムで生きていくことを選択することもありだと思っていたが、そんな国情では困る(笑)。姪っ子ちゃんそして、来年誕生予定の第二子が自立した社会人として生きていかねばならない2050年あたりのベトナムがどのような状態になっているのかについては日本の状況以上に気になる。
著者自身が述べているように、この本には「噂話」レベルの情報も多く、若干信憑性に欠けるうらみはあるものの、そういうことも含めて混沌とした社会なのだということが感じ取れる一冊だったように思う。