ここのところ、小説やらエッセイやら、新書なんかの「活字」を読むほどの気力が湧かないため、コミックを読み漁っている。読み続けている作品の過去巻を読み返したりもするが、特に最近ではKindle Unlimitedで適当なワードで検索をかけ、第一印象で面白そうだと感じたものを片っ端から読んでいる状態だ。
そんな渉猟生活の中でちょいと目に止まったのが標題のシリーズ。全14巻のうち、13巻までがKindle Unlimitedにラインアップされていたので、13巻まで読み切った。
私には「霊感」というものは全くない。度を越したネガティブ思考に陥りがちな脳みそのクセがあるために、暗闇や墓場、廃墟などに勝手に増幅した恐怖を感じることはあっても、実際に霊やら妖怪やらの存在を感じたことはないし、被害に遭ったこともない。実はいろんな被害を受けているのかもしれないが、何しろ「霊感」がないのだから、そうした不可思議な存在がもたらした障害なのか判断のしようがないのだ(苦笑)。
でも、昔からいわゆる「合理的な判断」だけでは説明のつかない怪奇現象は数多存在しており、そんな怪奇現象のおかげで、怪しげな霊能者たちが跳梁跋扈してきた。霊感商法などはその最たるもので、霊などの障害以上に深刻な経済的打撃を与えたりしてきた。おかげで、現実的なことに関しては超ネガティブ思考が働く私は、霊感商法には一切近づかないという自衛策をとってくることが出来たとも言えるのだが。
さて、標題のシリーズは霊的な存在を強制的に排除できる実力を持った霊能者・斎(いつき)氏の実際の除霊を記した作品集である。斎氏の活躍を拝見する限り、世の中には得体のしれない存在がウヨウヨしていてさまざまな障害を人間にもたらしているらしい。単独の霊が個人に祟る場合もあれば、「悪い気」がたまりやすい場所に住んでいる家族全体に害を及ぼす場合もあるようだ。斎氏は、全ての事例で的確な判断を下し、障害を取り除いていく。小林薫氏のトゲのない画風と、キャラ設定で全編にコミカルさが伴って、おどろおどろしさのようなものがなく、夜中に読んでいても恐怖で眠れないなどの障害はなかった。
このシリーズの中では思わぬ貰い物をした。俗に「霊に取り憑かれやすい体質の人」などというが確かにそういう人はいるらしい。だがそれよりも大切なのは日頃の心の持ち様だそうだ。恨みや怒りなどに囚われていると、悪質な霊が取り憑きやすいのだとのこと。このへんのお話を読んだ時、私には思い当たる節が思いっ切りあった。
鬱による休職が1年になろうとする今現在の状況は、理不尽な左遷人事を喰らわせた会社への恨み、腐り脳筋弱り毛根バカへの怒り、過干渉な母への苛立ち、同僚や上司から受けた冷たい仕打ちへの絶望感、遡れば小学校時代に受けたいじめへの悲しみなどに囚われた状態に他ならない。忘れようとしても忘れられないこうした思いにがんじがらめにされているのだ。
悪い霊が憑いているかいないかは別にして、こんな状態では、気持ちが晴れるはずもなく、元気も湧いてこないのは事実だ。エンターテインメント性以外にこのシリーズはこんな気づきをくれた。
ちなみに悪霊が取り憑きにくい状況というのは、何かに没頭している状態だとも書かれていた。私の場合は、書くことに集中していれば、気持ちが盛り上がり、変な考えに囚われることもないということではないか!!!
まさに拾い物。こういう気づきをくれるような巡り合わせになったことも、何か人智を超えた存在がもたらしたものなのではないかという、都合の良い解釈をしておくことにする。
斎氏は残念なことに、乳がんを罹患し、すでにこの世を去っておられた。その辺の経緯は↓のコミックに詳しいのでご参考まで。
ご存命であれば、ぜひ一度霊視していただきたかったと思った。合掌。