脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

今では戦前予想が虚しいものの、前半部分はなかなか役にたつ一冊 『ラグビー質的観戦入門』読後感

 

 

毎度毎度痛感させられる金言、「本は買ったらすぐ読め」を改めて実感させてくれた一冊。

 

本書は、以前紹介した『ラグビー知的観戦のすすめ』の続編とでもいうべき一冊で、2023年のフランスワールドカップ前に上梓された。そうした背景から、後半部分はほぼフランス大会の展望に費やされている。ジャパンが首尾よくプールDを2位通過して、プールCを1位で通過するであろう豪州とエディー・ジョーンズ門下兄弟対決に及ぶと予想しており、豪州との対決の展望までが書かれている。

 

元ジャパン戦士である廣瀬氏の立場で、しかも新書として発行する書物の内容としては、ジャパンが予選敗退するという予想は書きづらかっただろうな、と同情したい。結果は周知の通り、イングランド、アルゼンチンに力負けして2勝2敗の成績で予選敗退という「順当」なものに終わった。残念ながら、イングランド、アルゼンチン両国には付け入る隙がなかった。プールCに関しても、豪州はウエールズ、フィジーに負けて、史上初の予選プール敗退という屈辱の結果に終わった。廣瀬氏の予想は完全に外れたわけだ。

 

でも少なくともジャパンは確実に勝ち星を計算できるチームにはなった。エディー以前は、ランキング上位国に勝つことはおろか、同格のチームに関しても勝手に格下に格付けして、散々「勝てる、勝てる」と煽ったはいいが、実戦したらいいところなく負けという情けない状態を続けてきていたのだ。今回の事前予想では、チリ戦には勝てる、サモアとは五分五分だがなんとか勝てそう、イングランドには勝てない、というのが大方の予想。でこの3チームとの対戦は大方の予想通りの結果となった。アルゼンチンのみ、「エディー以前」と同じく、なんとか「勝ちたい」という希望が日本列島を占拠していたが、いい勝負はしたものの残念ながら「勝機」というべきポイントはついに訪れなかった。いい意味でも悪い意味でも予想がつきやすいチームにまでは成長したのだ。ハイパフォーマンスユニオンという仰々しい名称までいただいたので、次はなんとか8強以上を実現してもらいたい。

 

さて、前半部分はワールドカップなどの大舞台の試合だけでなく「日常」ラグビー観戦の際に、注目するとより深く観戦が楽しめる、というネタが色々と散りばめてある。また、廣瀬氏が常々唱えている「キャプテンシー」の内容についても、かなりわかりやすく解説してくれている。詳細は本文に譲りたいと思うが、一試合を6つの時間帯に分けて考え、各時間帯でのチームの勢いがどうなのか、その勢いはどのようなプレーによってもたらされたのか、をみていく、という視点は大いに参考になった。今後のラグビー観戦ならびに観戦記執筆に活かしていきたいと思う。

 

昨年末に、ジャパン代表HCにエディー・ジョーンズ氏が復帰することが発表された。大学やリーグワンの試合を積極的に視察するなど、早くも次のジャパンをどう作り変えるのかについて考えていることが伺える行動で、大いに期待したい。今まで積み上げてきたジャパンの戦法や戦術を一度全部ぶっ壊すような改革を断行しないことには、次のステージには進めないという局面に差し掛かっていることは事実で、さらに言えば、トップチームは日々進化し続けてもいる。エディー氏の指導の下で「ブライトンの奇跡」再来を望みたい。