脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

この方自身が一番問題アリなのはわかっているが、曲がりなりにもこんな方を国会議員にしてしまった日本の民度にも大いに問題アリ 『悪党 潜入300日ドバイ・ガーシー一味』読後感

 

 

一時は時代の寵児にして、参議院議員にまで上り詰めたものの、現在は一転して犯罪者として拘束されているガーシー容疑者の人となりを記した一冊。タイトルに「ドバイ・ガーシー一味」とあるように、ドバイのガーシー容疑者の元に集まった、少々ヤバい面々についても触れられている。

 

私自身野次馬根性とはお世辞にも無縁だとは言えない状態なので、「暴露ネタ」に対する需要が一定程度あるのは理解できる。そうした需要に応えているのが文春砲であり、一時の写真週刊誌であったわけだが、文春砲にせよ、写真週刊誌にせよ、芸能人ばかりではなく、政治家やお偉い先生方たちのスキャンダルを暴いてきた分、まだ「擁護」の余地はあるが、ガーシー容疑者の場合は、芸能人のスキャンダルばかり。世の人々のゲスな興味だけに根差した「暴露」は流石に褒められたものではない。しかもガーシー容疑者の場合はいわゆる女衒的な役割を果たすことで生計を立てていた、いわばその道のプロであり、プロであるならば、ギャラの中には「口止め料」も含まれているはずでそういう意味でも仁義にかける人物だと言わざるを得ない。

 

最終的に金は返したそうだが、タレントに会わせると謳って詐欺を働いたことといい、私はどうしてもこの人物の言動は信用できない。こんな人物を押し立てた「政治女子」とやらも元々いい加減胡散臭かったが、そんな団体が一定数の支持を得て、胡散臭さを振りまくだけ振りまいた人物が参議院議員に当選してしまったのだから、どこか日本という国が変な方向に向かっていってしまっているのではないかという感想を持たざるを得なかった。このまま行ったら日本はどうなってしまうんだろうという不安を表面化させ、人々の政治に対しての意識が多少なりとも高まったという効果だけはあったかもしれない(笑)。

 

さて、標題の書は朝日新聞のドバイ支局長まで務めた伊藤喜之氏が、ガーシー容疑者とその周辺の人々に密着し、彼らの生い立ちから、なぜ現在のような姿になったのかについてかなり細かく取材し、描き出している。

 

若干「盗人にも三分の理」的なニュアンスを感じる文章ではあったが、冷静に客観的に彼らの行動を描写していた。

 

彼らは自らの集団を「梁山泊のようだ」と比喩しているそうだが、これは梁山泊に集った豪傑たちに失礼な表現だと思う。梁山泊の豪傑たちは世の中を根底から変えるために集い、時の権力と戦った。対して彼らは世の中のほんの表層を引っ掻き回しただけの、単なるならず者の集まりでしかない。有名人の秘密の「暴露」などという行為はおよそ高潔な志というものとは縁遠い、金儲けだけが目的の愚劣な行為に過ぎぬ。時の権力がとっ捕まえることに躍起になったということくらいしか共通点はない。

 

さて、現在ガーシー氏は一度も登院しないまま参議院議員の任を解かれ、恐喝その他の罪でめでたく容疑者となり、身柄を拘束されている。マスコミの報道も沈静化し、このまま、おそらくは「あの人は今?」的な存在と成り果てることだろう。で、どうせ忘れた頃にまた暴露系を始めたりするんだろう。別に動画配信くらいはしてもらっても良いが、二度と国政に携わろうなどとはして欲しくはない。