私は必殺シリーズのファンだ。本格的にハマったのは、飾り職の秀、三味線屋の勇次という人気者を輩出した『新・必殺仕事人』からで、語り口がマイルドになった、いわゆる「後期必殺」をリアルタイムで観て育った。で、後にビデオデッキを手に入れてから、「前期必殺」やら、テレビドラマ最初の作品「必殺仕掛人」も観た。池波正太郎作の原作も何度か読み返した。
というわけで、それなりに「仕掛人」の世界観を理解し、自分なりのイメージを持って鑑賞したのが標題の作。主人公梅安に豊川悦司、相棒の彦次郎に片岡愛之助というイケメン二人を揃えた「必殺映画」の最新作とあって、AmazonPrimeにラインアップされたのを即鑑賞した。
トヨエツの梅安、ラブリンの彦次郎ともにややカッコよすぎ。特にトヨエツさんの坊主頭は残念ながら似合っていない。殺しのシーンも静かすぎて盛り上がりに欠けたように私には感じられた。まあ、これは私が必殺シリーズの各作品を観すぎたせいで、「こういうシーンにはこのBGM」みたいな変な公式が出来上がっていたからかもしれない。ウエスタンのシーンを彷彿とさせるBGMが流れて、梅安が凄みを効かせた表情で仕掛けるってのが私にとっての「公式」で、その「公式」から外れてしまうと、なんとなく違和感を感じてしまう。この作品はBGMをあまり使わず、スローな映像を駆使して迫力を出す、という方法を講じていたが、私の変な「公式」を外して考えてみればそれなりに効果的な描き方ではあったと思う。
一番の失敗は、この作品の最大の敵、おみのを演じた天海祐希が絶望的にキレイすぎたこと。このおみのというキャラは実は藤枝梅安の生き別れた妹お吉。圧倒的な色気で男を虜にし、財産を奪ってしまうという典型的な「悪女」なのだが、正直、ソソラれない。男を引き込んでしまう妖しさに欠けてしまうのだ。実に折り目正しい、猛々しい女という印象。大きな料理屋の女房に収まるために、前の女房を梅安に仕掛けさせるという因縁もあるのだが、亭主である料理屋の主人を罵倒するシーンなど、悪女というよりは、女性上司による部下へのパワハラにしか見えなかった。流石に何年も「理想の上司」一位を獲得するだけのお方だ(笑)。良くも悪くも、ある意味清潔感のある人物に演じさせるのは適当でなかったように私は思う。とはいえ、じゃ、そういう悪女役に相応しい、それなりの格の女優って誰がいるの?と言われてしまうと、にわかには浮かんでこないんだけど。梅安の愛人おもん役を演じた菅野美穂の方が、まだよかったかな、とは思う。
この作品には第二作もあるらしい。とりあえず、AmazonPrimeで公開された即鑑賞しようとは思う。