脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

夢と友情と恋愛と金儲け。時代の要請に全て応えていた一作 『血まみれの決闘』鑑賞記

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スカパーの東映チャンネルで無料放映していたものをストックしておいた作品。あんまり古すぎて、DVD化もされていないようで、Amazonのリンクも貼れなかったので、東映チャンネルのページを無理やり引っ張ってきた。

 

主人公は我らが高倉健さんだが、この作品で演じた牛島五郎というキャラは、ボクシングの才能だけはあるものの、気弱で、意中の女性に恋心を打ち明けることすらできない、昨今の状況の中ではDTと蔑まれるような人物。ボクシングは得意ではあっても、本来的には人と殴り合うことを嫌ってもいる。

 

それを無理やりに引き摺り回すのが五郎の先輩である早田(岡田英次)。物語的にはこの早田という人物の方が主人公かもしれない。福岡の炭鉱育ちで、学も技術も何もない人間がのしあがるには、拳だけで勝負できるボクシングしかないと思い定めている早田は、自身がボクシングジムへの入門を目指すが果たせず、代わりに五郎のマネージャーとして生きていくことを決意。そのままマネージャーとして五郎を支えていれば波風は立たないのだが、それでは映画として成り立たなない。

 

早田は勝ち進んでいく五郎の名声を利用して裏で試合のチケットを売り捌き、その利益を私して懐を豊かにしていく。嫌がる五郎を無理やりリングに上げるために五郎が恋焦がれるみち子という女性との仲を引き裂くようなことまでする。まあ、これは人が良すぎる五郎が、自身でなすべき愛の告白を早田に任せてしまうという失態を犯したが故でもある。

 

そんなある日、チケットの闇販売が明るみに出て早田はボクシング界を追われてしまう。五郎が所属していた田村ジムもこの不祥事で活動停止を命じられ、首が回らない状態に。その窮状を救うために五郎は多額の移籍金を条件に日の出の勢いの西島ジムに移籍。しかし、五郎には深刻な障害が忍び寄ってきていた。ひょんなことから五郎の状態を知った早田は五郎を救うべく奔走するものの…。というのが大粗なあらすじ紹介。結果がどうなったかは是非とも本編をご覧ください。

 

この作品が公開されたのは1957年で、まだまだ戦後の混乱が抜けきらない時期だ。それゆえ、何の手練手管も持たない若者が己の両拳だけで世界一を掴むことのできるボクシングに対しての憧れは強かっただろう。そして華やかなスポットライトの影で蠢くドス黒い人々も多数いたのだろうと思う。それゆえ、当時の人々にこの物語が受け入れられる素地は十分にあったのだろうと思うが、今みると、いかにもストーリーが古臭い。まあ、健さんという俳優と、日本文化に根ざした様式美を味わうには適した作品ではあると思う。健さんのボクシングシーンはそれなりにうまく出来上がっていたように思う。相手役を演じた、おそらくは本職のボクサーの方が筋骨隆々としていていかにも強そうだったのが若干リアリティーを損じてはいたが。