脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

やっぱりキレイにまとまりすぎていた感のある闇の世界 『仕掛人・藤枝梅安2』(2023年)鑑賞記

 

先日一作目を鑑賞した作品の二作目。

 

今回は小説では独立した作品であった『殺しの四人』と『秋風二人旅』を独自のアレンジで一緒に描いている。

 

前者は若き日の梅安が犯した不倫の「後始末」。当時鍼医者として駆け出しだった梅安は、患者であるおるいと男女の仲になってしまう。それをおるいの夫である剣客井上半十郎に知られてしまうが、おるいは自分から誘いをかけたにも関わらず、梅安に無理やり犯されたと嘘をつき、梅安はおるいの話を真に受けた井上に手ひどく痛めつけられてしまう。おるいを許せなかった梅安はおるいを鍼で殺してしまい、そのことがきっかけで仕掛人の道を歩み始めた。妻を殺された井上もまた梅安に恨みを持ちながら仕掛人となり、相棒の佐々木八蔵とともに、仕掛を繰り返しながら梅安の姿を探し求める日々を送っている。

 

後者は彦次郎の「敵討」。不遇の少年時代を送ってきた彦次郎は寺男としての仕事にありつき、おひろという妻を娶り、おみつという娘も得た。そんな幸せの絶頂にいた彦次郎を地獄の底に突き落としたのが、自分の処遇に不満を持ち、その不満を手当たり次第周囲に撒き散らしていた浪人井坂惣市。おひろを手ひどく暴行し、そのことで精神的に深いダメージを負ったおひろはおみつまで道連れにして自死してしまったのだ。そして、彦次郎も闇の世界に身を置くこととなってしまう。

 

梅安が狙われる身、彦次郎が敵討に燃える身と、立場が180°違う二つの戦いが描かれるのだが、そのどちらもがドロドロとした恨みに満ちたものであるはず。しかし、キャストのせいか、時流に沿った描き方のせいか、そのドロドロ感があんまり感じられない。第一作でも感じたことだが、全体にキレイすぎるのだ。前作の鑑賞記でも書いた通り、私には中村主水をメインキャラにした「必殺シリーズ」への思い入れが強くあり、その世界観バイアスがかかってしまった状態で作品を観てしまうので、どうしても「何か、ちょっと違う」と感じながら観てしまうのだが、豊川悦司片岡愛之助のイケオジコンビは何しろカッコ良すぎる。鍼とか吹き矢、毒殺なんていう「正道」から外れた殺し方をするより、剣の腕の冴えで悪を断ち切るという戦い方の方が相応しいと感じてしまうのだ。

 

一方で、本来は別々の作品だったものを、矛盾、違和感なく一つのストーリーにまとめ上げた演出には感心した。その演出がしっかりハマり、原作にはない一つのクライマックスシーンが生まれていたように思う。梅安と彦次郎がいかに凄腕でも、剣の達人、井上、佐々木コンビと正面から戦っては勝ち目はない。原作では、井上、佐々木の襲来を予測した梅安、彦次郎コンビが梅安の自宅に罠を張って待ち受け、返り討ちにするのだが、この作品では罠を張った自宅に招き入れる前に、両コンビが直接対峙してしまうシーンが用意されている。その窮地を両コンビがどう脱したか?それについては是非とも本編をご覧ください。

 

さて、この作品、果たして続編はあるのだろうか?原作に登場した第三の男、小杉十五郎はまだ登場していないし、悪役のラスボスの一人、白子屋菊右衛門も、まだ「味方」のままだ。続編を作る余地は十分に考えられるのだが、果たして、今の世界観のままで世に数多いると考えられる「必殺ファン」の支持を得られるのだろうか?豊川、片岡両氏の支持層という新しい「ファン候補」を必殺の世界に呼んでくることはそれなりにできたとは思うが、旧来の支持層の求める「必殺像」とはやや趣が異なるゆえ、この二作の評価には大いに興味があるし、続編が作られるのか否かも大いに気になる。