USB-HDD録り溜め腐りかけ映画鑑賞キャンペーンの一環として鑑賞したのが標題の作。
ストーリーはあってなきがもの。フランス、ニースの狭い路地で派手なカーチェイスの末に、崖からぶっ飛んで一人の男が死ぬのが冒頭のシーン。その死亡事故現場に臨場したのが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じるアラン。元軍人で現在は刑事の彼は死体の顔を見てびっくり。なんと自分とそっくりなのだ。他人の空似とは言えないほどのそっくりさんぶり。本人が二役を演じているんだから当たり前だが。
で、アランは自分の母親に事情を聞きに行く。なんとアランには双子の弟ミカエルがいたのだ。生後間もない時期に二人同時には子供を育てられないという母親の判断で、ロシア人に引き取られていた。母親はアランにはその事実をひた隠しにしていたし、母親自身も引き取られた後のミカエルについては全く知らない状態だった。
この設定、いかにも安易。せめて母親がもう死んでて、そっくりさんの正体が判明するまでの過程でもうひとひねり、ふたひねりくらい欲しかった気がする。最初っから、いきなりネタバラシされちゃったんで、その時点で私はかなりの興醒め。
まあ、アクション映画撮影の腕を買われて、香港映画界からわざわざ呼ばれたリンゴ・ラム監督の真骨頂であるアクションシーンの方に重点を置くという制作意図があったんだろうな、とは思う。変にサスペンス風味を滲ませると、我らがジャン=クロードのアクションシーンにフォーカスし切れないという判断を誰かが下したんだと思う。なお、リンゴ氏はこの作品制作後、ハリウッド映画の制約の多さに辟易としたという感想をもらしたらしい。
さて、ミカエルが貰われていった先はロシアンマフィアの親玉の家。ミカエルが何やらやばい仕事をしていたらしいということは、アランをミカエルと見誤ったマフィアの下っぱやら、そのマフィアと結びついた悪徳FBIやらが、次々とアランの命を狙ってくることで窺い知れる。
こういう戦闘も敵の正体や目的がはっきりしているよりは、何も知らないアランに次々と敵が奇襲をかけ、アランが元軍人の経歴を生かした戦闘術でそれを凌いでいき、その過程で、いろんな証拠を集めていき、そっくりさんの正体が判明するとともに、そのそっくりさんがどんな闇を抱えたいたのかがわかっていくというストーリーの方が重奏的な味わいを産んだような気がするのだが、これは私個人の好みの問題かもしれない。ジャン=クロードのアクションは十分に楽しめるし、ミカエルの恋人アレックスとアランとのラブシーンは濃厚だ。細かい理屈は抜きにして、純粋にチャンチャンバラバラを楽しむというのも一つの鑑賞法ではある。