脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

偉大なるマンネリではあるものの、最後の逆転劇は見どころあり 『たつまき奉行』鑑賞記

 

USB-HDD録り溜め腐りかけ作品鑑賞キャンペーンの一環としての視聴作。

 

片岡千恵蔵氏が遠山金四郎を演じる『いれずみ判官』シリーズの第14作目。様々な姿で市井の人々の中に溶け込んで、悪事を暴く金さんの勇姿が最大の見せ場ではあるものの、今作では最後のお約束、お白洲の場で双肌脱いで「この桜吹雪が目に入らねぇか!!」と啖呵を切る場面はなし。ただし、最後の場面での意外や意外の大逆転は、なかなかの見ものではある。

 

さて、物語は金さんのところに学友の藤堂佐渡守(山村聰)が訪ねてくるところから始まる。佐渡から発掘された金三百貫を乗せて江戸へ向かう御用船佐渡丸が、大竜巻に巻き込まれて行方不明になってしまったというのだ。もし、その行方がわからなければ、藤堂は責任を取らされて、佐渡の金山奉行を解任される。というわけで金さんに泣きついてきたというわけだ。自然災害じゃ、いかに金さんでもどうしようもないじゃん、という根本的な疑問は残るのだが、兎にも角にも金さんは与力の度会三四郎三四郎の恋人で佐渡丸に乗船していて行方不明になった与力手塚久兵衛の娘美鈴と共に佐渡に渡る。

 

で、佐渡島では、いかにも怪しい面々が佐渡金山で働く人々やその家族を手厚くサポートしている姿に出くわす。荒っぽいのは人足頭の虎鮫(進藤英太郎)。猛々しい物言いと、腕っぷしに物をいわせて力で人足たちを押さえつけながら島の造り酒屋杉戸屋(月形龍之介)や支配組頭の郡源太夫にはヘイコラする小物っぷり。杉戸屋からは袖の下をもらってコロリと態度を変えるゲスぶりも見せる。

 

一方の金さんは、酒場に入ったり、人足の中で働いたり、牢に忍び込んだりして情報収集に努め、様々な謎に迫っていく。このシリーズの特色として、金さんが誰かに変装する場合、服装くらいしか変えず、顔は丸出しで敵の面前にいるのに、敵は全然その変装に気づかないという、かなり無理矢理なお約束があるのだが、この作品も思いっきり、「どう考えたって気づくだろ」という場面が出てくるが、まあ、歌舞伎と一緒でこの辺は「様式美」の一つとして受け流すしかない。

 

で、先述したように最後の最後に大逆転があるのがこの作品の醍醐味。今でこそ、いわゆる2枚目俳優が悪役をやることは珍しくなくなったが、歌舞伎の流れを汲んで、善人役はあくまでの善人役しかやらず、悪役はいつでも悪役という暗黙の了解みたいなものをこの作品では崩している。当時としては結構画期的なチャレンジだったのではないかと思う。ま、それ以外に見どころがないというのも事実だけどね。