脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

時に無知は何より強かったりする 『不死身の保安官』鑑賞記

 

不死身の保安官 [DVD]

 

USB-HDD録り溜め腐りかけ作品鑑賞キャンペーン第3弾は西部劇。最近NHKBSのプレミアムシネマは西部劇と時代劇しかやってない気がする。まあ、レンタル屋との棲み分けという意味では懸命な選択だとは思うが。

 

物語はイギリスから始まる。銃の製造販売会社の重役で発明狂のティブスは、顧問弁護士から、会社の財務状況が著しく悪化していて、倒産寸前であることを知らされる。こりゃいかん、とティブスは銃の需要が見込める場所、すなわち当時、様々な国から流れてきた移民が進出し、インディアン(字幕では先住民となってた。こういうところだけ気を遣ってる。そんなとこに気を遣うくらいなら受信料安くしろ。訳のわかんない政党もどきの跳梁跋扈許しちゃってるじゃねーかよ、という感慨はさておき)たちとの戦いに明け暮れるアメリカの西部へ旅立つ。

 

事実上の無法地帯で、移民たちとインディアンのみならず、移民たち同士の争いも頻発している西部にやってきたティブスはこれ以上ない完璧なトリックスター。女一人口説くのも力づくではなく、騎士道精神に則って礼儀正しく接する。水代わりにウイスキーを煽る荒くれ男たちの中で一人紅茶を嗜む。銃を売りにきたというのに、銃で解決するよりは話し合いでの解決を目指す。要するに、作品公開当時、世間に流布していた「英国紳士」が無秩序な状況に入り込んだらどうなるか、を描いたシュチュエーションコメディーなのだ。

 

で、周りの状況を一切理解しないティブスは単なる成り行きで、インディアンの酋長と友好関係を結び、そのことで保安官に祭り上げられる。そして最後は別に意図したわけでもないのにその友好関係がうまく作用して、争いだらけだった西部を「平定」してしまうのだ。のみならず、舞台となった街一番の美女は手に入れるし、しっかり銃も売り捌いて当初目論んだ会社の救済もしっかり果たす。人生こううまく転がりゃそりゃ泣けてくるわ、本当に。

 

この作品ではティブスというトリックスターは、集団から排斥されない。それどころかいくつかの対立し合う集団を全て一つにまとめ、地域に秩序と平安をもたらすのだ。それもこれも根本的にはティブスの無知と、どこへ行っても英国流を通すという愚直な「ぼけ」がもたらしたもの。ゲラゲラ笑えるシーンはなかったものの、なかなかよく考えられた筋立てだったと思う。最終的には銃や腕っぷしにモノを言わす、マッチョな男ではなく、礼節は失わないものの、硬直化した思考と行動しかできない男が最後に勝利する。ま、これも「普通の人」が英雄となる一つの夢物語なんだ。