脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

大型のトレーラーを運転したことがある人じゃないとわかりにくいスリルだったかも 『ブラック・ドッグ』鑑賞記

 

 

USB-HDD内録り溜め作品消化活動の一環として鑑賞した一作。

 

日常生活を送りながらの鑑賞となると、名作・大作よりはついつい肩の凝らないB級作品の方に食指が動いてしまう。派手なカーアクションを期待して鑑賞開始。

主人公ジャック(パトリック・スウェイジ)はかつて大型トレーラーのドライバーだったが、運転中にハイウエイで死亡事故を起こしてしまい、運転手としての職はもちろん、運転免許も失ってしまい、整備工場で油に塗れる毎日を送っている。

 

そんな折、会社の上司からトレーラーを使用した物品の運送を依頼される。引き受ければ1万ドルという謝礼が支払われる上、運転免許も復活されるという破格の条件を提示されての依頼だったが、事故に関するトラウマもあり、ジャックは断る。

 

断って正解。大体こういうウマイ話には必ず裏があるのが世の常。ジャックが運ばされるのは、ギャングが使用する大量の銃器だったのだ。依頼された時点ではまだ荷物の中身までは知らされてはいないが、とにかく、ジャックは断った。

 

甘い条件を提示しても、相手が首を縦に振らない時、ヤバい連中はどんな手段を取るか?答えは脅迫だ。この場合は直接的な脅迫ではなく、ジャックの家庭には9,000ドルの借金があることが判明する。ジャックの服役中、女手一つでは生活を維持しきれなかったため、妻が重ねた借金だった。妻に借金までさせてしまったことに罪の意識を覚えたジャックは、気の進まない依頼を受けることになってしまう。

 

というわけで、あとは積荷を奪おうとする依頼主の敵やら、FBIやらが入り乱れて、ジャックの輸送を阻もうとしてくる。で、ジャックは持ち前のドライブテクニックで、さまざまな敵をかわして輸送を続けるというのがストーリー。

 

大型のトレーラーというのは、当然普通の乗用車を運転するのとは訳が違う。動くのも止まるのも、スピードを出すにも、車体やエンジンに巨大な負荷がかかる。普通乗用車しか運転したことのない身には、今ひとつ、大型トレーラーの運転の機微みたいなものが理解できない。ハンドル捌きひとつ取ってみても、何かしらの危険性が伴うであろうことは、想像はできるのだが、実感が伴わないのだ。

 

それじゃ、お前は宇宙船が宇宙空間を航行している際の感覚を実感できるのか?というツッコミもあろうが、設定がはるかに現実を超えている場合は、逆に自由に解釈できる。そこいらへんに日常的に存在しているものでありながら、然るべき条件をクリアしないと体験できない、ホンの紙一重の向こう側にあるものだから、なんとか実感したいのだ。隔靴掻痒とはこのことだが、この実感を得たいがためだけに大型免許を取るつもりもないから、このもどかしさを感じ続けるしかないのだが(笑)。

 

ストーリー的には、さまざまな困難を全て乗り越えたジャック一家には幸せが訪れるという、教科書通りのハッピーエンドで収束する。最後の最後に一波乱あったが、それは余計な付け足しだったように私には思えた。

題名のブラッグ・ドッグには何か特別な意味があるのかと、ちょっとググってみたら、確かに特別な意味はあった。主にイギリスで、語り継がれている黒犬の姿をした妖精のことなのだそうだ。この妖精は夜間に古い道や十字路などに現れると伝えられている。ジャックは「死亡事故を起こしてしまった際に、確かに道を走ってくる黒い犬を見た」という旨の台詞を吐いている。私は無理矢理この黒い犬を、過酷な労働で疲労の溜まったジャックが見た幻影だと理解した。そして、ジャックが請け負った輸送そのものも、どす黒い仕事だったし、次々襲いかかってくる危険も黒い犬が牙を剥いて向かってくるシーンに暗喩されていたように思う。

 

思っていたほどのドキドキ感は感じられなかった作品だった。