ついにオリンピックが強行されてしまった7/23(金)。皆から祝福されないオリンピックの開会式なんぞ観る気にもならない(7人制ラグビーだけは観たい)し、ナイターはやってないし、その他の裏番組もろくなものがなかったので、録り溜めUSB-HDDをひっくり返して見つけたのが表題の作。
私は東野圭吾氏の作品は一作も読んだことはないし、連ドラとしてのガリレオシリーズも観たことはない。まだ日曜の16:00にやっていた頃の福山雅治氏のラジオ番組で、おぼろげに、作品の世界観を知っていた程度が本作に関する予備知識。
ま、要するに福山雅治のファンを当て込んだ、顔見せ興行映画だよな、っていうかなり偏った先入観を持ちつつ鑑賞開始。
物語は、うらぶれた風情の中年男、石神(堤真一)が一軒の弁当屋を訪れるところからスタートする。弁当屋の経営者は花岡靖子(松雪泰子)。彼女は石神のアパートの隣室に娘の美里とともに暮らしているシンママだ。石神は物語中では天才物理学者ということになっている湯川学(福山雅治)をして天才と言わしめたほどの数学者なのだが、世に埋もれた状態のままだ。
そんな靖子のもとに、ある日、元夫の富樫が押しかけてくる。詳細は省くが、冨樫に暴力をふるわれた母子は、結果的に協力して、富樫を絞殺してしまう。安普請のアパート故に、物音や振動は隣室に丸聞こえ。元々明晰な頭脳を持つ石神は、さまざまな状況を一瞥しただけで、靖子母子の犯罪を見抜いてしまった。
というわけで、ここから天才石神の殺人偽装工作が開始される。靖子母子には完璧なアリバイを作らせた上で、遺体は顔を潰し、指紋を全て焼くという念の入れよう。石神の工作は見事に成功して、警察は母子に対して濃厚な疑いを持ちつつもアリバイを崩すことができず、犯人は不明のままで捜査は行き詰まる。
そこで登場するのがご存知湯川。ドラマを観ていないので、想像で語るしかないのだが、普段の彼なら、ちょっとした綻びから、見事に謎解きをしてしまうのだろう。ただし今回の敵は学生時代から、湯川が天才と認めた唯一の人物が相手とあって、トリックの仕掛けの巧妙さ以上に、「情実」に邪魔される展開となる。全ての状況は、花岡母子の殺人と、石神の隠蔽工作を指し示しているのだが、決定的な証拠は見つからないし、石神はもとより、固く口止めをされている花岡母子も真実は喋らない。
さて、湯川はどうやってこの難題の謎を解くのか?というわけでストーリー紹介はここまで。あとは本編をご覧ください。
石神は、途中で靖子の行動を逐一監視するような行動を見せ、おや、実はそっち系の紙一重の異常な方向に向かうのかい?と思わされるのだが、実はこの行動すらも靖子を救おうとする心根からのものだということがその後の展開で語られる。では、なぜそこまで、つい最近まで知り合ってもいなかった靖子に対して、自分が犯人隠避の罪を犯してまで守ろうとするのか?これも本編を観てくださいとしか言いようがない。
そして、おお、そうきたか、と思わされる最後の謎解きには感心した。私には予想もし得なかった謎解きだったとだけは言っておこう。
最後の最後、湯川の葛藤を物語る落涙のシーンも悪くはなかった。題名にしたとおり、世の中、全て数字の計算通りに進むもんじゃないよ、ってのがくどいほどにわかりやすく伝わってきたのだが、おそらく、湯川のこういう姿を見せることが劇場版としての一味変わった演出なのだろう。
顔見せ興行映画だろうという想像は基本的に外していなかったが、ちょいと拾い物のストーリー展開ではあった。