脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

二兎を追うものは一兎をも得ず 『プレシディオの男たち』鑑賞記

 

 

ショーン・コネリー、マーク・ハーモン出演のバディもの。サンフランシスコにあるプレシディオ軍事基地憲兵隊長アラン・コールドウェル中佐(ショーン・コネリー)、中佐の元部下で現在はサンフランシスコ警察の刑事であるジェイ・オースティン(マーク・ハーモン)がお互いに複雑な感情を持ちながら、基地内で起きた殺人事件の謎を追う。

 

この作品は、ずいぶん前にBSで放送されたもの(日本語吹き替え版)を録画しておいて観たのだが、放送局はいかにも殺人事件の謎解きがものすごく難解でその殺人事件のトリック的なものの追求がメインテーマの作品のような煽り文句で番宣をかけていた。それ故、ミステリー色の強い作品なのではないかという、変な先入観を持ってしまったのが悪かったのだが、この作品の最大の難解さは、登場人物の人間関係にある。

先述の通り、憲兵隊在籍当時ジェイはアランの上司だったが、とある事件の処置をめぐって対立してからは、お互いに憎しみ合う間柄。ジェイはその一件が元で憲兵隊を辞め、刑事に再就職したという設定になっている。この二人が一緒に捜査にあたるというのだから、最初からうまく行くはずがない。なんやかやと理由をつけてお互いの足は引っ張り合うわ、勝手に行動するわ。特に、かなりの「野生的」性格を付与されたジェイは暴走を繰り返し、ついには容疑者の一人を事故死させてしまったりもする。さらに言えばジェイはアランの娘ドナ(メグ・ライアン くるくるヘアーが印象的)と一気に男女の関係まで突っ走ってしまう。ドナはドナで娘にまで軍隊式の「厳格さ」で接してくる父親を快く思っていない。ジェイはドナが父親への反発から父とは敵対関係にあるジェイとできていることを「見せつけるため」に男女の中になったのではないかと無意味に悩んでみたりする。なんだ、なんだこの人間関係は?『岸辺のアルバム』じゃねーかよ、まったく。

 

最終的に殺人事件の実行犯とその背景は解明されるのだが、その間の、事件には直接には関係ない愛憎劇の描写が長くて一体どっちがメインテーマなんだと戸惑ってしまった。まあ、これは先ほども書いた通り私の勝手な先入観が招いた、鑑賞側の思いの迷走ではあったのだが…。なんだか、どっちつかずの展開ではあったが、いわゆる「バディもの」の一つの典型的な作品ではあった。

 

ショーン・コネリーの重厚な存在感とメグ・ライアンのキュートさは作品には好影響を与えていたと思う。ジェイを演じたマーク・ハーモンという役者はこの作品で初めて観たが、この作品が「出世作」だったようで、この後に数々の作品に出演している。ただし、この作品で見せたような「野生的で時に致命的な暴走をやらかす」というポジションはどんどん出てくる若手の二枚目にすぐに奪われてしまったようだ。典型的な「後継者」はトム・クルーズだろうか。マークとトムは風貌まで似ている気がする。