脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

ウィル・スミスの二匹目のドジョウ 『ワイルド・ワイルド・ウエスト』鑑賞記

 

 

ウィル・スミス主演のSFチックなコメディーアクション。ウィルが演じるのは、米陸軍の大尉ジム・ウエスト。彼は南北戦争の際に大虐殺を行なった南軍のマグラス将軍を捕縛し、その罪を問うことを任務としている。

 

そこに絡んでくるのが、科学者を連続で誘拐した罪で、やはりマグラス将軍を追っている、連邦保安官ゴードン。ケヴィン・クラインが演じている。

 

エストとゴードンの二人が、図らずもバディを組んでマグラス将軍を追いかけるというのがこの物語の大筋。ただし、途中から本当の悪人がマグラス将軍の下で兵器開発を行なっていたラブレス博士だ(マグラス将軍はラブレス博士に殺されてしまう)ということがわかり、二人はラブレス博士一派との戦いに臨んでいくということになる。この戦いには、このお話のマドンナ、リタを救うというストーリも付与される。リタは最後の最後でオチをつけてくれたりするので、要注意人物。

 

ごくごくシンプルな勧善懲悪モノのストーリーなので、どんなスパイスを効かせてあるかが作品の味わいとなる。

 

第一のスパイスは、ウィル・スミスの芸達者ぶり。この作品の二年前に出演した『メン・イン・ブラック』のエドワーズを彷彿とさせるコミカルな演技と気の利いた台詞回しで、常に細かい笑いを起こさせる。製作者側も、ウィル・スミス本人も明らかに「二匹目のドジョウ」ってやつを意識していたんじゃないだろうか?観客が求める「ウィル・スミス像」を見事に演じ切って見せていた。ただし、彼はこの「毒のないエディ・マーフィー」的なコミカル路線を突っ走ることだけを良しとはせず、シリアスな役柄もこなせることを後々に示してはいるが。一度確立された当たり役のイメージが強いうちは、そのイメージを引っ張るだけ引っ張ろうというのは、エンターテインメント界の常道ではある。

 

第二のスパイスは、ケヴィン・クラインがコミカルなウィル・スミスに負けじと、細かい笑いを取りに行っていること。美輪明宏氏もかくやと思われるようなミエミエのケバい女装を見せたり、変な小道具に凝ってみたり。黙っていれば二枚目そのものだし、おちゃらけるウエスト大尉との対比を際立たせるという演出方法もありだったと思うが、ここは二人が二人ともおっかぶせるように笑いを取りにいっている。

 

第三のスパイスはラブレス博士のトンデモ発明品の数々だ。ラブレス博士は南北戦争で下半身を全て失っており、自ら開発した蒸気機関で動く車椅子に乗っているのを手始めに、兵器満載の蒸気機関車も出てくるし、終いにはタランチュラなる大掛かりなロボット兵器なども出てくるのだ。そのロボット兵器の中には、人間型のロボットも何人も乗り合わせている。

 

普通に考えて、蒸気機関だけを動力としてあんなにスリムな躯体になるはずはないし、あんなに精緻で複雑な動きは、AIが発達した現代ですらいまだに不可能なお話だ。このロボット兵器が出てきた時点で、この作品はリアリティーを捨てているというのが分かる。作品全体がおちゃらけテイスト満載なのだから、全ての演者がそれに乗っかって笑いを取りに行く方がむしろ自然というもの。真面目な人間がもし存在していたら、発狂せざるをえないような世界観なのだ。まあ、そんなことを言い始めればスーパーヒーローものの作品なんぞ観てはいられなくなるのだが…。

 

笑いを意識した作品に相応しく、人が死ぬような戦闘シーンはあっても、生々しく流血するようなシーンはほとんど描かれていない。リアリティーを捨てた作品ならそういう演出もありだろう。

 

金出して劇場まで行ってみるほどのモノではなかったが、ちょっとした空き時間に、気軽に鑑賞するには良い作品だったように思う。