脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

サンゴリアスの最後の気の緩みがちょっと心配 2021トップリーグ観戦記1 サントリーサンゴリアスvsNECグリーンロケッツ(TV観戦)

2021年トップリーグプレーオフの2回戦は、レッドカンファレンス首位のサンゴリアスと、ホワイトカンファレンスで未勝利のまま最下位に終わったグリーンロケッツの一戦。

 

普通に考えれば地力の差は明らか。しかしながら、グリーンロケッツは前節の1回戦で1点差の接戦を制するという「修羅場」を一度くぐって来ている。一発勝負のノックアウトステージではこうした「勢い」は軽視できない。加えて、グリーンロケッツサンゴリアスに対し相撲で言うところの取口の良さを持ち合わせている。しぶといディフェンスでアグレッシブなサンゴリアスのミスを誘い、こぼれ球をゲットしたり、密集でターンオーバーを発生させて、そこからの逆襲を狙うというのがそのプレースタイルだ。過去において、優勝したシーズンですらシーズンの序盤では煮湯を飲まされた経験は多々あるし、日本選手権決勝で自陣ゴール前からのロングカウンターアタックサンゴリアスの息の根を止めたこともあった。

 

サンゴリアスファンである私としては、グリーンロケッツの術中にハマることを心配していた。しかしキックオフ直後からその心配はすぐにに杞憂であったと気がついた。

 

先ごろ発表になった日本代表の候補に入っている選手が先発15人のうち8人いて、リザーブにも2人いる上にニュージーランド代表の中心選手ボーデン・バレットまでいるという充実の布陣を誇るサンゴリアスのスピードとフィットネスがグリーンロケッツのプレーをはるかに上回っていたのだ。流れるようなラインへのパス回し、後から後から湧き出てくるフォロー。なんとか、ラインのどこかでポイントを作って流れをとめ、接点でファイトしてサンゴリアスのスピードを殺したかったグリーンロケッツだったが、ポイントを作る前にオフロードパスをガンガン繋がれたし、いざポイントができてもサンゴリアスのプレーヤーの集まりは早いし、コンテストのパワフルさも勝っていた。

あっという間に、という感じで3トライ奪って17−0。トライの位置が隅っこだったこともあってNZの至宝ボーデン・バレットのキックは全般的に成功率が低かったが、まあ、これは「こんな日もあるさ」で済んでしまうレベルのお話だろう。仮に彼のキックが不調でもプレースキックを蹴れる選手はうじゃうじゃいる。

このまま、それこそ100点ゲームか?くらいに思ったが、どっこいグリーンロケッツも黙っていない。ラインアウトのサインプレーから1本トライを返すと、得意のスローテンポのスタイルに試合の流れが少し傾き始めた。

 

しかしながら、ここで試合の趨勢を決定づけてしまうプレーが発生。グリーンロケッツのロック、サム・ジェフリーズ選手の中村亮土選手へのタックルが危険なタックルと判定されて一発退場となってしまったのだ。長身のジェフリーズ選手が、小柄な中村選手に正面からタックルに行き、低い姿勢を取りきれなかった結果、ジェフリーズ選手の肩が、中村選手の顔面にモロに入ってしまったのだ。これは故意ではないとは思うが確かに危険なプレーではあった。一昨年のワールドカップなどの際にも特に首から上にダメージを与えるようなプレーは故意か偶然かに関わらず、かなり厳しくペナライズされるようになったが、この一件もその流れに沿ったものだろう。タックルは腰から下に入るのが基本で、特にでかい相手にタックルに行く場合は足首に入るつもりで行け、などと指導されてきたが、この基本中の基本は非常に難しい。相手の動きもあるし、こちらの体勢やら、なんやら、いろんなことが重ならないと、教科書通りのタックルはできないのだ。まあ、自分がプレーする際は上半身にだけは行かないよう、気をつけていこうとは思う。もっとも、ボールがある場所にまずたどり着く、というのが私にとっての最初にして最大の課題ではあるのだが(苦笑)。

閑話休題。フィールドプレーもさることながら、ラインアウトのキャッチャーであり、スクラムでも重要な役割を担うジェフリーズ選手の退場が決まった瞬間、セットピースでの劣勢も予想され、ますますグリーンロケッツの旗色は悪くなった。ランのフィットネスで劣っている上に、力比べのセットピースのメンバーが一人欠けたというのはそれこそ二重三重のハンデを背負って戦うこと。このハンデはどう足掻いても埋められない。

とはいえグリーンロケッツの面々は中島主将を筆頭に決して心を折ることなく奮戦した。前半にもう一つトライを返したし、どの局面でも実にタフにファイトしていた。サンゴリアスの速いテンポにも最後まで食らいついて行った気迫は実に見事なものだったと言える。

 

いかにも軽くテンポ良くボールを前に運ぶサンゴリアスに対して、たまに巡って来たチャンスをなんとかものにしようと全員が必死に走っていた。ベテランの滝沢選手などは最後脚が攣ってしまったほどだ。まあ、これはチーム全体に休憩を与える「演技」だったのかもしれないが(笑)。


試合最終盤には脅威的な粘りで3トライを奪って見せたが、運動量のさは明らかで、最終スコアは76-31でサンゴリアス勝利。グリーンロケッツの粘りは賞賛に値するが、サンゴリアスにとっては誠に後味の悪い勝利だった。特に後半インパクトプレーヤーとして入ったFWの選手が不甲斐ない。元気一杯の若手が疲労困憊のおじさんたちの壁をなかなか突破できないまま、食い下がられてしまった形になった。最後の3トライは取られるべきものではなく取り切って終わりにすべきものだった。

 

こういう気の緩みはトーナメント戦が深まれば深まるほど命取りになりかねない。そういう意味で、次戦の相手と予想していた東芝ブレーブルーパスとの試合ではリーグ戦の本割で見せたような完膚なきまでの勝利を望みたい、と書いて締めようとしたら、なんとブレーブルーパスリコーブラックラムズに負けてた…。いずれにせよ、順調に行けば、ブラックラムズの次は神戸製鋼コベルコスティーラーズ、そして決勝に進めば、相手は「最強の盾」にして、医者を目指すために引退する福岡堅樹という物語まで背負ったパナソニックワイルドナイツだ。最後のトップリーグ、是非とも優勝して有終の美を飾ってほしい。