11月23日というのは晴れの特異日だという。永遠のライバル校である両校の対戦は、晴れの確率が高い日にしようということで、毎年この日に行われることになったのだが、今年は珍しく雨中の対決となった。
前半は、慶大がこの雨をうまく利用した。雨で滑りやすい状態のボールを早大の選手が扱いあぐねているところをついて、密集でのターンオーバーを5回も成功させたのだ。慶大は俗に「魂のラグビー」などと言われ、何かいいプレーが出ると「気合が入っていた」とか「気力で勝っていた」などという形容をされることが多いのだが、なんのことはない、密集でのボール争奪戦の技術を磨いたことと、早大の選手より素早く密集に集合するフィットネスを身につけていただけのお話だ。気持ちなくしては戦いに臨めないというのは真理だが、さりとて、気持ちだけでは勝負には勝てない。勝負するだけの技術をきちんと身につけるためのトレーニングを積んだ成果が出たのだと思う。
プレーしていて一番気持ちが萎えるのが、このターンオーバーというプレー。特に相手ゴール前まで迫っていてこれを食らって逆襲受けて逆にトライまで奪われたりしたら、一気に気持ちが凹む。試合の流れが完全に相手に傾いてしまうことも多々ある。
しかしながら、慶大は、ターンオーバーこそ成功させたが、その後の逆襲から得点につながる機会がほとんどなかった。結果的に前半は10-0とリードを奪ったのだが、逆にいうと10点しか取れなかったことで流れを自軍に引っ張り込むことができなかった。
流石に早大の選手は、失敗を失敗のまま終わらせるようなやわな神経は持ち合わせていないようだ。傷を最低限に食い止めるという気合いと、それを実現するだけの技術、体力を持ち合わせている。そうでなければレギュラー獲得などおぼつかないのが名門校の名門校たる所以だ。
何しろ両校ともにいいプレーよりもミスの方ばかりが目立った。ラインアウトはノットストレートやスチールばかり、キック処理時のノックオンも、ダイレクトタッチも目立った。スクラムもアーリープッシュや、出すタイミングの誤りなどスッキリしない場面ばかりだった。
慶大は明大に、早大は帝京大にそれぞれ前節で大敗したが、本日の早慶戦を見ている限りでは敗れるべくして敗れたという感しかなかった。
後半は、流石にフィットネスの落ちた慶大は簡単にターンオーバーできなくなった。もちろん早大が前半の反省を踏まえて接点での攻防により深い注意を払うようになったこともあるが。
ミスが生じやすくなるハンドリングプレーを避けて、ラインアウトからのモールで二本トライをとって逆転したところも「勝ち慣れている」感を受けた。拮抗した試合であればあるほど、こうした勝負勘がモノをいう。
大学選手権に向け、両校がどこまで立て直すことができるか?今のままの状態では帝京大に勝つことは非常に難しいと思う。
慶大は卓越した能力を持つ切り札的な存在が不在だ。
早大は、今日の慶大に手を焼くようでは、接点の攻防においては二枚も三枚も上手な帝京大を崩すことは難しいと思う。BKの走力という長所はあるものの、球の争奪戦で敗れていては折角の武器も宝の持ち腐れとなる。
少々気の早い予想だが、今年の大学王者は帝京大しか想像し得ない。次節の早明戦でよほどの圧勝を見せない限り、この予想は覆らないと思う。