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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

ふた昔前くらいのジャパンと外国チームの試合を見ているかのような錯覚を覚えた一戦 全国大学ラグビー選手権決勝(帝京大学vs早稲田大学)観戦記

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2022-23シーズンの大学No.1を決める一戦は関東大学ラグビー対抗戦優勝の帝京大学と同3位の早稲田大学との対戦となった。

 

この両チームは春、夏合宿、そして対抗戦での試合と今シーズン3回対戦して、3回とも帝京が勝利している。春はダブルスコアで圧勝、夏合宿は1トライ差の辛勝ながら、内容的にはかなり帝京の方の分が良かった印象があった。そして対抗戦の対戦では49-17の大差がついた。どう考えても帝京有利は揺るがない。

 

早稲田に有利な点があるとすれば、3回戦で今シーズンの関東大学リーグ戦の台風の目となった東洋、準々決勝で対抗戦では敗れた永遠のライバル明治を破った上で、準決勝で34-33の最小得点差で京産大に勝った「勢い」があるところだっただろう。こうした強豪たちとの対戦は、ただの練習よりも選手たちの心身を数十倍鍛える効果がある。また特に一発勝負のトーナメントでは、苦戦を勝ち進んできたチームの勢いというのは時に予想もしなかった結果をもたらす。

 

試合は帝京のキックオフで始まったが、早稲田がキャッチミスしてしまい、そのボールをすかさず帝京が確保、そのまま2分近く攻めてノーホイッスルトライを奪う。有利と目されていた方がいきなりの先制パンチ。

 

「ああやっぱり帝京は強い」…、観客やTV視聴者の大半がそう思い、一方的な展開を予想したが、どっこい、早稲田の選手たちは全然腐ってなかった。その後の展開で2トライ(1ゴール)を取り返して逆転に成功したのだ。FW、BK一体となった連続攻撃とバックスリーのスピードを活かす多彩なパス回し。このまま早稲田が走り勝ってゲームにも勝利するって展開も十分ありうるぞ。しかしそんな思いは束の間で消え失せた。

 

帝京は一人一人がとにかく力強い。その上よく走る。FWなどは全員100kgを超える巨漢揃いだが、早稲田のスピードに負けない上、接点では常に互角以上のコンテストを見せていた。このコンタクトプレーでの優位性は、確実なボディーブローとして早稲田のプレーヤーの消耗を促した。攻めては一人で複数の相手プレーヤーを引き付けた上で、十分に余裕を持ってボディーコントロールしてボールを活かし、守備においては常に高い確率でのターンオーバーの可能性を孕む。

 

早稲田に2本目のトライを奪われ逆転された直後に、すぐさまトライを奪って再逆転してからは、帝京は全く揺るがなかった。接点から出たボールはまずFWに持たせて前進を図り、それを二度三度と繰り返すことで、相手のディフェンスの数を減らし、空いた穴にFWを走り込ませるわ、余裕のできたBKに存分に走り回らせるわでみるみるうちに得点差が広がっていった。

 

この試合の展開を見ていて、早稲田に2015年以前のジャパンの姿を重ね合わせた方は多かったのではないか。いろんな策を考えて試合に臨み、前半の前半くらいまでは競った展開になるものの、次第に個々のプレーヤーが力負けし始め、単純なサイドアタックの繰り返しでずるずると後退し、最後はやりたい放題にやられて失点を重ねるという展開だ。

 

選手の努力が足りなかったとは決して思わないし、特に攻撃面において早稲田の持ち味はそれなりに出せていたとは思うが、日本一を取るためには接点でのコンテストが一番重要だと見極め、そこを突き詰めるためのトレーニングをたっぷりと積み、その中から選出されたメンバーで望んできた帝京との差は如何ともし難かった。結果として、11トライ、73点という得点、53点いう得失点差は過去最高という帝京の圧勝で幕を閉じた。ここは素直に帝京の強さを褒め称えるべきだろう。

 

前人未到の9連覇を成し遂げた後、ちょっと一休みはあったが、医療系の学部からの栄養教育、科学的トレーニングの導入支援など大学を挙げてのサポート、有力な選手のスカウティングなど環境が充実した帝京の現状を考えると、またしばらく「帝京の時代」が続くのではないかと感じさせられた一戦だった。