脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

最初にして最大の一歩は「自発的学習者」となること 『英語学習法に悩むのをやめる本』読後感

 

 

以前にもこのブログに書いたが、私の現在の業務の一つは、所属部署メンバーの英語力の向上である。現在の部署においては英語は「習得が大事であることは理解できるが、当面必要ないので、学習の必要を感じない」スキルである。英語を使う人とのやりとりはほぼないし、昇進や昇格に直接関係するものでもない。ゆえにメンバーたちには、日々の業務で忙しくて疲れて帰った後にテキスト広げる気になんかならないよ、という気持ちが本音の根底には常にある。従って、会社から尻を叩かれれば渋々はやるが、「自発的学習者」などとは逆立ちしても言えない方々ばかりである。実際に、私がアドバイザーとしてメンバーの学習に携わることを命じられているグループなどは、向上度合いを測るためのTOEICすら受験しようとしない方々ばかりである。「受けても低い点数に決まっているから受けない(したがって受験のための努力もしない)」という言葉がまず最初にきて、あとは勉強できない理由を綿々と言い募るのみ。そんな繰り言言ってる間に単語の一つも覚えろよ!!という言葉を何度飲み込んだことか。私の胃腸は飲み込んだ言葉ですでに爆発寸前である。

 

つい先日も、グループの中で1番の若手から「どんな内容でもいいから週に一度グループの勉強会を開いてください」などというリクエストがしれっと流れてきた。昨年の10月くらいに英語力の向上というミッションを課せられてから、各種のレベルの違うテキストは何度も紹介したし、いろんなところから問題を見つけてきて問題集を作って提供もしたし、『社会人英語部の衝撃』をはじめとする各種英語学習方法についての書籍のエッセンスも何冊か紹介したし、英語学習に有益なアプリやら、しまいにはゲームの情報まで提供したのだ。そこまでやったのに「どんな内容でもいいので…」などというメッセージがくることに衝撃を覚えた。聞けば、私抜きでグループのメンバーで話し合いを持ち、週に一度程度何かやらないとやばいという話にはなったのだが、何からやっていいかわからないという状態になったために「なんでもいいから」というリクエストになったのだそうだ。

 

ちょっと待てよ、配ったテキストの中身は学習したのか?提供した問題集はやってるのか?アプリとか、ゲームとかは?それにいくつも紹介した学習方法は実践したのか?…今までやってきたことが全て無駄だったのだ、と考えるしかない現状に全身から力が抜けるようなダメージを受けた。

 

さて、著者、新多了氏は立教大学外国語教育研究センターで、大学全体の英語教育のカリキュラム作成などに取り組むかたわら、第二言語習得(Second Language Acquisition ,SLA)について研究している方である。いわば、ある程度以上の基礎学力を持った方に対しての外国語教育のノウハウを考え、実践するプロの方である。学習のレベルは違えど、新多氏と私の置かれている立場はよく似ている。しかも私の場合は、向学心に燃える(?)大学生とは違い、上述したように、モチベーションの向上、維持が困難な社会人であり、大学の教官のような「勉強しなきゃ、単位あげないもんねーだ」という切り札も使えない、一介の平社員である。私のような立場の者が、どうしたら上述したような現状を改善できるのか?について書いてないかどうか、藁にもすがる気持ちで読んでみた。

 

結論から言うと、指導者は学習者が「自発的学習者」になるまで、様々な刺激を与え続けるしかないのだそうだ。私も現状で考えられる策はできる限り提供してきたつもりなのだが、そもそも「学習」という方向に目が向いていない社会人たちをモチベートするには足りなかったということなのだろう。もう一度与える刺激を考えなければいけないようだ。

今回の例では、そもそもアドバイザーという存在がグループの相談の場に必要とされなかったという事態がまず第一の問題。これは私の努力不足であり、みだりにメンバーたちを責めるわけにはいかない部分もある。そしてグループとしての話し合いの結果が「皆で週に1回程度『勉強会』を開く」という「他者志向」なものに帰結したということが第二の問題。出てきた順番は2番目だが、これが最大の問題だ。メンバーが「自発的学習者」ではない者ばかりだという事実をモノの見事に示している。ではこの事実を変えるためにどうしたら良いのか?私は個人個人と一回じっくり話し合う機会を設け、その上で各人にあった対策を改めて考えてみることにした。たかだか5人くらいのグループではあるが、年齢も業務も置かれている私的環境も全て違う人たちばかりであり、全ての人にあった学習方法を提供できているとは言えない状態だったからだ。

 

「なんでもいいから」という言葉には大いにダメージを受けたし、その直後には激しく憤りもしたのだが、なんのことはない、私がやらなきゃいけない問題が顕在化しただけのお話だ。ぺこぱ風に言えば、まさしく「時を戻そう」である。

 

なお、この書には、初級者、中級者向けの具体的かつ有効な学習方法もしっかりと記されている。上級者向けの学習方法がないのは上級者はすでに「自発的学習者」としての自己を確立しており、自分自身にマッチした学習方法を身につけていると定義できるからだそうだ。具体的な内容についてはぜひ本文に当たっていただきたい。実際にグループメンバーたちに早速用いてみたいと思えた方法もあったので、各人との面談の際に適宜紹介して行こうと思う。

 

問題は、進捗状況の追いかけだ。今回直接メッセージを送ってきた若手などはモロに体育会系なので、時には少し厳しくすべきだと考えて、メッセージに対して半ば叱責に近い形で「今更、なんでもいいとはなんだ!!」と返信したし、次回のTOEIC受験に関しては恫喝してでも受験させようと思っているのだが、こういう高圧的な尻叩き方式は、私自身がやられて一番嫌だった方法だし、今までにあった軽蔑すべき上司は全て体育会系高圧的人物だったので、同じ轍は踏みたくない。でも最初の一歩を後押しするには少し強引な方がいいのか…。この迷いに関する手っ取り早い答えは残念ながらこの本にはなかった。まずは先にも書いた通り、一人一人と直にコミュニケーションをとることから始めないといけないのは事実だ。