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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

イギリス、一度行ってみたくなったなぁ 『夫婦で行く意外とおいしいイギリス』読後感

 

清水義範氏が奥様と共に海外旅行に赴き、その土地土地の、主に食事を紹介する「夫婦で行く旅」シリーズの中の一冊。

 

今回の旅行先はイギリス。なんでも、事前に計画していたツアーが団体客のキャンセルによって、本当に直前で実施されなくなり、「代替案」として参加することになったツアーがイギリス巡りだったとのこと。まあ、ラグビー好きである私なら、みる場所にも、イベントにも、自分用の土産にも事欠かないから喜んで行っちゃうけど、この「夫婦で行く旅」シリーズの大きな特徴は、食事の詳細な紹介であるので、そういう意味では一番ふさわしくない国である。

 

古今東西、イギリスの食事を褒めた本にはお目にかかったことがない。私が敬愛する北杜夫氏も「あそこはローストビーフくらいしかうまいものは無い」と断じている。以前ちらっと見かけたTV番組によれば、イギリスではその昔、貧乏人は燃料にも事欠くような生活を強いられていたため、ろくすっぽ食材を加熱することができなかったそうで、食中毒が多々発生したそうである。十分に火の通った食材を口にするというのは上流階級の証だったが故に、火をしっかりと通した料理こそが高級、という意識が染み付いているのだそうだ。時代は移り変わったというのに、その番組のレポーター氏によれば、例えばチキンソテーなどは「火を通しすぎててパッサパサ」だったそうである。ちなみにそのレポーター氏は、イギリスのポピュラーな川魚料理、ウナギのゼリー寄せを一口口にした途端吐きそうになっていた。画面越しで観た私も「おそらくものすごく生臭いんだろうな」としか思わなかった。

 

食い物に文句をつけられたイギリス人たちは異口同音に「いや、フィッシュアンドチップスは美味いよ」と反論していたが、あんなもん、揚げ油もしつこけりゃ、ソースもしつこい魚のテンプラじゃねーか!としかやはり思えなかった。

 

しかし、著者清水氏は、題名にもした通り「意外とおいしい」と感じたのだそうだ。全体に薄味で、テーブル上の塩には必ず手を伸ばすことにはなったものの、捨てたもんじゃない、というのが総体的な評価であった。

 

こればっかりは、実際に現地に行って、現地の気候風俗、人情の中で味わってみないことには本当のところはわからない。最近私は健康問題やら最高権力者様の嗜好もあってかなりの薄味に慣れているので、結構イケんじゃねーの?くらいには思えた気がする。羊が出てきちゃうとちょっと遠慮しちゃうけどね。

 

ちなみに、イギリスはもともと牛を大量に飼育していたそうなのだが、産業革命蒸気機関を用いた毛織物の織機が開発され、毛織物を大量に生産するための原料確保のため羊の飼育が盛んになり、牛の飼育は廃れたとのこと。人間の都合で生活の場を奪われた牛に同情しちゃうな、食料としての羊が好きになれない私としては…。

 

というような個人的感慨は横に置くとして、こうしたイギリス史の意外な一面なども、風景の描写の中にさりげなく盛り込まれている。スコットランドの城を紹介する際にイギリスのEU離脱の際に大きな炎が上がったスコットランドの独立問題にも触れ、イングランドスコットランドの根深い対立、スコットランドとフランスのひっついたり離れたりの関係など、イギリス史のみならず、ヨーロッパの歴史についても、ざっと概観している。近頃の言葉で言えば非常に「コスパ」の高い内容になっている。

 

一つ残念だったのは、このシリーズ名物の「地元の人が行くようなマーケットに行き、地元の食材やテーブルワインを買い求めて、地元の人が日々味わっている食事をちょこっと体験する」という記述がなかったこと。参加したツアーの特徴なのか、観光地以外でのフリータイムが少なく、地元の人々に混じっての街歩き、みたいな時間がなかったようなのだ。清水氏の奥様は最後の最後、ロンドンでの夕食でフィッシュアンドチップスを食し、「意外に上品で、あっさりしている」という感想をお持ちになるのだが、本当は、レストランではなく、街角の屋台ででも売っているやつを買ってきて、スーパーの量販品のワインとか、日本ではお目にかかれないような、地元のビールとかとともに味わった感想を書いて欲しかった。

 

まあ、もし我々がイギリスに行くようなことがあればぜひ体験してみたい食事のスタイルなので、それは現地に実際に行く際のお楽しみとして取っておくことにした。