脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

江戸の名残にど真ん中のガイドブックを読んでみた 『日本橋異聞』読後感(再読)

 

作家にして、当代きっての博物学荒俣宏氏が、江戸の風情を残しながらも変容し続ける日本橋界隈に関しての蘊蓄を傾けた一冊。本棚の本を箱詰めしている最中に、「都合二十年以上も住んだお江戸ともついにお別れか…」などという感慨に囚われてしまったため、「衝動読み」。

 

読んでいて、「あれ、この話どこかで聞いた覚えがあるぞ」という想いが何度かよぎったのだが、荒俣氏は著作も多く、メディアへの露出も多いため、例えば『アド街ック天国』みたいな番組のコメントで聞いたんだろうとそのまま通読し、確認の意味で、自分のブログの過去ログを検索してみたら、案の定すでに読んでいた。私の脳も母に負けず劣らずの速度で劣化しているようだ(苦笑)。参考のために全文を載せておく。

 

”博覧強記の博物学荒俣宏氏による、日本橋界隈のトリビア本。

水天宮駅のすぐ前に位置する「ロイヤル・パーク・ホテル」の館内誌に書かれたエッセイに加筆補正して一冊にまとめたものです。

人形町や水天宮、日本橋近辺の様々な見所を紹介するガイドブックの趣を保ちながら、そこここにあるメジャーな名所旧跡から見過ごしてしまいそうなホンの小さな路地裏に至るまで、氏の博覧強記ぶりが遺憾なく発揮されている一冊です。

当家は人形町のファンで、人形焼きはもとより、魚久の粕漬けや柳屋の鯛やきなどをこよなく愛好しております。この本を読んだお陰で、人形町の風情、というか江戸の気風を残す街の雰囲気の訳が何となく解ったような気がしました。

人形師の辻村ジュサブロー氏の工房や、江戸時代から続く柳行李の老舗など、伝統あるものが色々な場所に息づいているからなんですね。

その他、水天宮を始めとする七福神の由来やら、丸善高島屋のコンセプトの違いやら。読み終わってすぐに日本橋界隈をブラつきたくなったほどの読み応えあるガイドブックでした。

荒俣氏の著作ってのは何を読んでも本当にためになります。ますます憧れちゃうなぁ^^。"

 

この駄文を書いたのはブログを始めてほどない頃なので、誠に文章が拙い。まあ、今だって大した文章は書いていないが(笑)。内容に関して間違ったことは書いていないが味も素っ気もない読書感想文だ。市とか県とかのレベルの読書感想文コンクールであれば、小学生だってもっと気の利いた文章を書くだろう。

 

閑話休題

 

繰り返しになるが、この一冊は、水天宮そばのシティーホテルの館内で配布されている小冊子に掲載されたコラムを集め、一部に加筆・改訂を加えたもの。荒俣氏一流の該博な知識に、独特の考察を加えた「地誌学書」でありながら、同時にホテルに泊まった客に、せっかくだからちょっと近所をぶらついてみようか、という気分を催させるような気軽な読み物ともなっている。

 

特に人形町界隈は名所・名店揃いで、ガイドブックやらネット上の情報などもそれこそ溢れかえっているが、荒俣氏のコラムは表面上をなぞるだけではなく、江戸が都になる以前からの土地の状況から、都となり人口が集中した後の、「町」としての成り立ちや盛衰、明治大正昭和と変遷した時代毎の町の様相を簡潔にして味わい深い文章で綴っている。その中に「町」と「丁」の違いや、人々が呼び慣わした「通称」がいつの間にか正式な名称となった「人形町」の地名の由来などが、さりげなく盛り込まれているところが、いかにも荒俣氏らしい。

 

個々のコラムについては是非とも本文を味わっていただきたい。読み終える頃には、少なくとも「東京初心者」に対しては十分に大きな顔ができる程度の知識は身についているはずだ。

 

昨今のコロナ禍で、まだまだ街歩きを楽しめる時期は先のことになりそうだが、コロナ以前の日常が戻った暁には、今度は旅行者として日本橋界隈を訪ね、この本に書かれている町の姿を「実体験」してみたいものだ。例えばイタリアのフィレンツェに匹敵するような、歩き回り甲斐のある町であるに違いないし、この書の上梓以降に起こった変化を感じてみるのも興味深い。ついでに言うと、私が生きているうちに、高速道路に覆われていない「日本橋」も見てみたい。