2019年秋の歓喜と感動から早一年以上経過した。優勝した南アフリカにこそ力負けしたが、アイルランド、スコットランドを撃破し、1次リーグを全勝で通過したジャパンの快進撃は日本国中を熱狂させた。スローガンの「One Team」も流行語の一角に食い込んだし、ジャパンの選手がCMに起用されるなどの効果も生んだ。
選手諸氏、チームスタッフ、協会それぞれの努力が実を結んだのは事実だが、2019年の結果が2023年のさらなる飛躍につながるという保証はどこにもないし、ジャパンと同じような劇的な進化を見せる国だって出現しないとは限らない。強豪国の巻き返しだって怖い。何より出場各国が、ジャパンというチームに対して「本気」で対応するだろう次回W杯は文字通りジャパンの真価が問われる大会になる。タイトルにした通り、ジャパンにとっては全てのグループが全て死のグループであると言って良い。
現在のジャパン飛躍の基礎を作り上げたエディー•ジョーンズ率いるラグビーのルーツ国イングランドは2019年にあと一歩で逃した優勝を手にするために、それこそ必死になっていることだろう。今年の南半球トライネーションズで、初めてオールブラックスに勝利したアルゼンチンも、初の栄冠を狙いに来るのは必至。同国が初めて3位になったフランスの地での開催という「ゲンの良さ」もある。ジャパンはイングランドには未勝利、アルゼンチンには1勝5敗と過去の実績からは分の悪さは否めない。
2019年の予選では過去一度も勝てなかったアイルランドと、1回しか勝ててなかったスコットランドに勝っただろう!!もう一つ言えば、2015年だって、過去対戦すらしてもらえたことのなかった南アフリカにだって勝っただろう!!
ラグビーファンなら当然、こう反論したくなるし、私自身もこの出来事にすがりたい気持ちはヤマヤマなのだが、今回は前二回とは明らかに環境が異なる。
2019年のW杯以降、ジャパンはチームとして全く活動できていない。コロナのおかげで今年予定されていたテストマッチは全て中止になったし、サンウルブズが参加したスーパーラグビーも途中で中止。南半球の強豪四カ国の対抗戦に参加するというお話も立ち消えになったし、欧州のシックスネーションズにフィジーとともに特別参加するという誘いも断らざるを得なかった。どちらも、今後の強化策に繋げるために重要なお話だったが、コロナうらめしである。
ジャパンの不参加を尻目に、南半球は南アフリカを除く三カ国で対抗戦を行い、その中で、アルゼンチンがニュージランドに初勝利という衝撃が出来した。欧州もフィジーを加えた七ヵ国で対抗戦を実施した。自らの選択の結果でもあろうが、はからずして、島国の日本だけが取り残された状態、いわばラグビー鎖国とでもいう状態に追い込まれてしまったということだ。1995年W杯の「ブルームフォンテーンの悲劇」を生み出した日本ラグビー暗黒時代と同じ状態だ。
前回とは違い、トップリーグにラグビー先進国から優れたプレーヤーが多数参加するようになったために日本ラグビー全体のレベルは上がったが、それだけでは世界の潮流についていけないというのも厳然たる事実。しかし、チームとしての強化を図れる状態にはないというのが現状。
ではどうすればいいか?方策の一つは、個々の選手の海外進出だ。アルゼンチンは、選手個々人が欧州や南半球の他国のプロチームに積極的に参加して、自身のレベルを上げる努力をまず行った上で、最終的にチームとして熟成させるという手法を用いて、強豪国の一角にのし上がってきた。フィジーやサモア、トンガの選手も同様に海外での経験を積んだ選手が多数を占める。
対して日本は、松島幸太朗選手が仏の名門クレルモンでレギュラーに定着して大活躍していたり、姫野和樹選手が来年度スーパーラグビーのハイランダーズに加入するなどの例はあるものの、まだまだ選手任せになっている部分が大きい。こうした動きを日本協会のプッシュのもとに、もっと組織的に大々的に行うべきだろう。これを機に、さまざまな手段で安定したルート作りに取り組んではいかがだろうか?個人のレベルアップなくしては、チームとしてのレベルのアップも望めないのだから。
各国に与えられた時間は平等だが、強化の方法は平等ではない。現時点で、ジャパンは強化策の面で一歩も二歩も世界からは遅れていると自覚して、着実にリカバリーできる方策を考えて実施していただきたい。2023年にはさらなる歓喜をジャパンがもたらしてくれることを期待している。