脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

『沈黙シリーズ』の中では比較的出来が良かったと思う 『沈黙の追撃』鑑賞記

 

沈黙の追撃 [Blu-ray]

沈黙の追撃 [Blu-ray]

  • 発売日: 2015/10/02
  • メディア: Blu-ray
 

 見事なまでにセガール映画(=『沈黙シリーズ』)のフォーマット通りだったのが標題の作。軍なり傭兵組織なりにいたことのある主人公が、巨大な悪の組織と戦って勝利を得る。でその過程にある戦闘シーンではセガールが日本仕込みの合気道を駆使したアクションを魅せるというのがそのフォーマット。今作も設定のディテールは違えど、どこかで観たことのあるストーリーが展開される。今作の、主人公たちへの依頼者兼支援者は米軍。

中米のある国(どことは名指しされてないけど、まあ、中南米で、経済的にはともかく「心情的」に親米的な国なんてないから、文字通りどこでもいい)の反政府組織がアメリカの大使を暗殺。その方法は大使のボディーガードをマインドコントロールして射殺させるというものだった。この方法を用いるのは悪徳科学者のレイダー。彼は大使暗殺を手土産にその反政府組織の秘密基地に匿われている。これ以上同じようなテロ騒ぎを起こされては敵わん、と米軍は暗殺部隊を送り込むが、その情報は米軍内にいるスパイから敵にバレており、部隊の半数はその場で射殺され、もう半分は捕虜となる、というのが物語の始まり。

 

今作で多少なりとも新鮮味が感じられるのは、上述の通りマインドコントロールという手段が使われたこと。ただし、このマインドコントロールの理屈が今ひとつ噛み砕かれていない。なんだか仰々しい装置は出現するのだが、この装置のどの機能が脳のどの部位に影響を及ぼして、自らの死の恐怖にすら屈しない強力な支配力を持つのか?ストーリー展開の中では「コントロールする人間の恐怖に働きかける」という訳のわかったようなわかんないような説明しかなされないし、ネット上のあらすじ紹介やら、解説やらを眺めてみても明確な答えが出ていない。コントロールを受ける人物の脳裏によぎる、その人物にとって過去最大の恐怖体験のシーンが小刻みに挿入されはするが、結局そのシーンの後にどんな結末があったのかが語られないのが、隔靴掻痒の苛立ちを感じさせるのだ。

そんな苛立ちに関係なく、物語は進んでいってしまうので、仕方なくストーリー展開の方に関心を移したが、マインドコントロールを受けた結果、一度スイッチが入れば、とにかく敵の親玉である悪徳科学者のレイダーに命じられたことを冷徹に果たす存在になってしまうという設定そのものは悪くなかった。しかも、セガール演じる主人公コーディーと、一癖も二癖もあるその元部下たちに、元海兵隊の女性研究者チャペル博士、フリーの女兵士ダミタが組んだチームには、レイダーに洗脳された人間を元に戻すのは不可能で、奪回を命じられた捕虜は、ほぼ間違いなく洗脳を受けている、ということは明かされないまま。相手の基地から逃げる手段も用意されてないし、ようやく見つけた潜水艦は洗脳された捕虜たちがいることを理由に情け容赦なく味方であるはずの米軍からロケットを撃ち込まれ、沈没。普通、ロケットが撃ち込まれると予想されたら、もっと慌てて脱出用のボート用意するんじゃねーの?という素朴ながら強力なツッコミも浮かんでくるのだが、この辺は、敵の人間より明らかに遅くしか動けていないのに、銃の弾は当たらないわ、敵の攻撃は全て見切って全く怪我をしないわ、というセガール演じる主人公の「神通力」とでも理解するしかない(苦笑)。なお、相手基地内と潜水艦内の洗脳された捕虜との戦闘でメンバーは5人にまで減った。

でもって、最後は生き残りのメンバーで総攻撃をかけ、首尾よくレイダーを討ち果たしてメデタシメデタシ。最後の最後のワンシーンが思わせぶりで苛立ったのと、もう一つの敵と化した米軍にはなんの復讐もなしってのが、少々消化不良だったが、この文章の題名通り、比較的出来が良かったと思えたのは事実。マンネリを好む人種ってのはどこの国にもいるんだね。