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必ずしも独裁が悪いとは限らない『独裁国家に行ってきた』読後感

 

独裁国家に行ってきた

独裁国家に行ってきた

  • 作者:MASAKI
  • 出版社/メーカー: 彩図社
  • 発売日: 2018/03/14
  • メディア: 文庫
 

 世界各国の雑貨を買い付けて販売することを生業とし、204カ国に行ったことがあると豪語するMASAKI氏の旅行記。題名どおり、独裁国家を旅した紀行文集である。

 

独裁国家というと、最近盛んに花火に毛の生えたようなシロモノを打ち上げては気勢を上げている半島北部の変な髪型の指導者がいる国をまず思い浮かべる。飢えた民衆から、搾り取るだけ搾り取った原資で、自らは醜いまでに肥え太り、他国にハッタリをかますためにせっせと軍備の増強に励む国家というイメージである。逆らう者を次々と闇に葬る、プーチン大統領率いるロシアもこの典型例のイメージに近い。また、最高権力者の座にある人物が好き勝手し放題という意味では、やはり髪型が変な男が大統領の座にあるアメリカも独裁国家的な色合いを強めていると言って良い。

 

実は世界には独裁国家というのは結構な数があるのだ。ロシアやアメリカのように「事実上の独裁的国家」ではなく、法的に独裁者を正当化している国々が、である。これらの国々は、発展途上国に属することが多く、またいわゆる「小国」であることが多い。そして独裁国家と言ってもその内情は実にヴァラエティーに富んでいる。今の日本よりもよほど幸せなのではないかと感じさせてくれる国すらある。

 

例えば国王夫妻が日本に「新婚旅行」に来るなど親日的で、国民総幸福量が高い値を示すことで有名なブータンも「立憲君主制」を布いてはいるが、立派な独裁国である。独裁者の政治的ベクトルが人民を虐げる方には向かっていないだけで、いざとなったらいつでも「北朝鮮化」できてしまうということだ。まあ、あの国に限ってはそんなことはなさそうではある。

 

一方で、北朝鮮なんかよりももっとひどい国情の国も少なくない。自国民のみならず、自国を訪れる他国民から、官も民も国を上げてムシれるだけムシってやろうと、大口を開けて待っている国家である。

 

この書ではコンゴが最低の国として紹介されていたが、旅慣れていて、様々なトラブルシューティング能力をお持ちであろうと推察されるMASAKI氏ですら心の底からこの国に来たことを後悔するような散々な目に遭う。雑貨を仕入れて云々のレベルではなく、まずもって国境で止められて、小役人に威張り散らされるだけ威張り散らされて、少し反抗したら監獄に入れられるわ、事あるごとに賄賂を要求されるわ、出国の手続きも、通常の倍額以上をふっかけられるわ、日本大使館員の目の前で、無理やりボートで遠くの地に連行されるわ…、よく生きて帰って、本まで出せたな、と抱きしめたやりたくなるくらいの目に遭っているのだ。

 

世界は広い。俗に「日本の常識は世界の非常識」などと言われるが、コンゴをはじめとする独裁国家では、国の権力に後押しされた不条理がまかり通ることが「常識」なのだ。相撲の土俵上で正々堂々と戦うことを常識とする日本人に対し、土俵に上がるどころか、100m離れた地点からロケット弾を打ち込んでくるのが、彼の地の「常識」なのである。

 

こうした、トンデモ独裁国家を巡ると、いろんな意味で鍛えられるとは思うが、私は遠慮したい。水も、清潔なトイレも、ベッドも保証された安全なパックツアーでその国の上澄み部分だけ味わわせてもらえば十分だ。まあ、ライターの仕事に結び付くというのならまた、話は変わってくるのだが(苦笑)。