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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

なぜ同性愛者の遺伝子が受け継がれるのか? 『フレディ・マーキュリーの恋 性と愛のパラドックス』読後感

 

標題の書は著者竹内久美子氏によれば、氏の著作である『同性愛の謎 なぜ クラスに一人いるのか』の増補改訂版とのことである。

 

なぜクラスに一人いるのか 同性愛の謎 (文春新書)

なぜクラスに一人いるのか 同性愛の謎 (文春新書)

 

 かなり前に旧著については感想を書いているので興味のある方はそちらもどうぞ

 

世に広く知られていることだが、フレディ・マーキュリーは男性同性愛者であった。そして奔放な性生活を送った結果、ちょうどその頃「流行」し始めたエイズに罹患し、世を去った。昨年公開され大ヒットした映画『ボヘミアン・ラプソディ』は創作の苦しみと、同性愛者としての苦しみを味わいながら作品とパフォーマンスを世に問い続けたフレディ・マーキュリーの姿をかなりリアルに描いた佳作であった。竹内氏は青春時代にフレディ率いるクイーンというバンドにかなり入れ込んだのだそうだ。フレディ・マーキュリーという人の純粋さに惹かれたからというのが最大の理由だとのことだ。氏は直接には触れていないが、フレディが同性愛者であったことは氏の学問的興味に大いに影響し、その後の人生の「方向性」までをも決めてしまったのではないか?

 

さて、一時期「男脳、女脳」という区分の仕方が流行ったことがあった。この説は、主にどういう風に思考するかによって脳の男女を区分していたが、器官のとしての脳には男性が出すフェロモンによって興奮する性質を持つものと女性の出すフェロモンに強く反応するものとがあるそうだ。そしてこの脳は必ずしも生物学的なオスメスとは一致しないそうである。男性の出すフェロモンに反応する脳が男性の頭にセットされれば、その男性は男性同性愛者になるし、女性に興奮する脳が女性に搭載されれば女性同性愛者になるというわけだ。

 

そしてここで、同性愛の最大の謎が出てくる。すなわち、同性愛者は同性愛者同士の性交渉では子供をなすことができない。従って、同性愛志向の脳を生じさせる遺伝子は残らないはずで、同性愛者は一代で絶えるはずなのに、実際には必ず一定数(40人に一人程度。ちょうどクラスに一人くらいの計算になる)の同性愛者が存在する。これは一体何故なのだ?

 

詳しくは是非本文に当たっていただきたいのだが、ごく荒っぽく言ってしまうと、当人の母方の親戚には必ず多産の女性がおり、その女性が産んだ子供の中に同性愛者の遺伝子が受け継がれるのだそうだ。なんとも不思議な現象である。まさに生物はその遺伝子が仮に乗るための乗り物にすぎない、という理論を体現している。種の保存という意味では無意味どころか有害な遺伝子であっても、個体としてはなんとかその遺伝子を繋ごうとして、様々な戦略を練り、シレッと実行しているのである。いやはや。