脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

悪魔の最大の武器は「ご飯論法」 『ゴーストライダー』鑑賞記

 

 

アメリカ映画界の船越英一郎ことニコラス・ケイジ主演のアメコミ原作B級映画

 

アメリカ映画の不思議さの一つに、クモみたいなどちらかといえば不気味な生物や、ノロマの象徴であるカメなんかをヒーローに仕立ててしまうことがあるが、この作品の主人公は全身から炎を発している骸骨男。多神教が、悪神をその価値体系に取り込んで、正義の神とし、悪との戦いに従事させるようなものか、と無理矢理に解釈し、さらに文化人類学的な視点からの読み取りだ、と強引にこじつけてストーリーを追う。

 

主人公のアクロバットバイク乗り、ジョニー・ブレイズ役のニコラス・ケイジが若い。2007年の公開作だから、今からたかだか14年前なのに20代前半といっても通用するくらい若い。ただ、後年顕著になった額の後退は既に始まっていたとみえて、前髪のアレンジがいかにも不自然だし、顔面がアップになるシーンではついつい生え際に目がいってしまい、集中力を大いに乱してくれた。まあ、正座して真剣に観るような作品ではなかったが(笑)。

 

さて、移動サーカスのバイクスタントショーの花形スターを父にもつジョニーは、父が肺がんで余命いくばくもないある日、突然現れた謎の男から父の命を救う代わりに一つの命令に従うという契約を持ちかけられる。父の命を救うためワラにもすがる想いでこの契約の応じるジョニー。謎の男の正体はメフィストで、父の癌は完治したものの、その後いきなりバイクショーの最中に事故死してしまう。

 

見事なまでの「ご飯論法」だ。「癌を治してやって命は救ったけど、その後の命の保証まではしてないもんねーだ」という、幼児が駄々をこねているのと同レベルの開き直りだが、ジョニーには契約遂行の責任だけが残される。以前どこかで読んだのだがこの「ご飯論法」で、契約者を陥れてしまうのは悪魔の常套手段なのだそうだ。例えば炎に巻かれて苦しんでいる人の前に現れて、火から逃れられる場所に連れて行ってやるから死後には魂をよこせという契約を持ちかける。火から逃れたい一心の人間が契約締結を了承すると、いきなり湖の底に連れて行って、溺死させてしまうというような手口だ。確かに火からは逃れられ、再度火に襲われる心配はないものの…、ツッコミを入れたくなる結末だ。悪魔の常套手段を駆使する、前職、及び現職の総理の言動はまさしく悪魔の所業であり、我々は愚かにも悪魔に政権を委ねてしまっているのだ。というのは流石に論理の飛躍のしすぎだが、「ご飯論法」でその場凌ぎを繰り返す政治家は少なくとも信用には値しないとは思う。

 

閑話休題

 

悪魔メフィストの命令は、自らの息子ブラックハートを倒すこと。親の名前が『ファウスト』という世界的名著の登場人物からとられているのに、息子の名前が、ブラックハートって…。あまりにも手を抜いてないかい?つか何も考えてないんじゃねーの?鈴木左衛門尉佐実って父親の子供の名前に鈴木一郎とはつけないだろうよ、流石に。そんなしょーもないツッコミしか浮かばなのだが、でも突っ込まずにはいられない安易さだ。

 

でストーリー的にはブラックハート及びその部下と、ゴーストライダーたるジョニーとの戦いがメインとなる。

 

でも本当の悪はジョニーを不利な契約に陥れたメフィストじゃないのかい?という素朴な疑問が湧いてくる。その点はご安心ください。アメコミ原作映画によくありがちな「続編」への含みを持たせたラストに見事に繋がっております。実際に5年後には『ゴーストライダー2』が製作・公開されている。ほらほらここでメフィスト殺してしまわなくてよかったでしょ?楽しみはつながっていく方がいいでしょ?楽しみがつながっていくのは製作側だけだっつーの!!

 

ま、気楽に娯楽として観る分には肩の凝らない作品ではあった。続編に見所があるとすれば、ニコラス・ケイジの前髪のアレンジ具合くらいかな(笑)。