脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

自分の人生は会社のモノじゃない! 『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』読後感

過労死という言葉が世界中で"kaorosi"として通用するようになってずいぶん経ちますが、この言葉が指し示すような残念な亡くなり方をする方は後を絶ちません。因果関係が特定できないものの、仕事が原因である可能性が高い自死などを含めれば、恐らく日本人の死因のトップテンの上位に食い込むのではないでしょうか。

私は過労死には至らなかったものの、死ぬような思いで日々しごとをしていたこともありますし、希望とはかけ離れた転勤でココロに多大なダメージを受けた上に、当時の無神経な上司に、健康上の理由でどうしても就きたくないと言っておいた仕事に無理やり就かされてココロがぶっ壊れた経験もあります。

でも結局は今の会社に30年以上も奉職していますし、ここ1年くらいで文筆業に本格的に取り組もうと考える以前は、漠然と定年まで今の会社に居続けることになるだろうと考えていました。仕事はつまらないし、今でも希望だけは出し続けている仕事に就ける可能性は皆無ですが、安定した収入と、「会社員」という身分に裏打ちされた様々な利得を捨てられないからです。単純に今の収入を失ったら生活が立ち行かなくなるという恐怖感もあります。

というわけで、本書の内容に入る前に、私自身の結論は早々と出てしまいました。今の仕事を辞めたら食っていけないからです。

そしてこれは自分自身が選択した道でもあります。嫌ならとっとと辞めちゃって自分の望む道に進むという選択肢だってあり得たのですが、結局は自分自身が選び取って今日の姿があります。

しかし、この選択をなさせたのは、幼少期の親からの刷り込みや、会社員でいてこそ一人前という社会通念でもあります。今や自分自身の意識から分離するのが不可能なほど、会社員=安定した身分という意識は強固なものになってしまっています。

いやはや。頑張って文章は書いてはいるものの、まだまだ小遣い銭にもならない程度の収入しかない現在の状況では、いかに仕事がつまらなかろうと、会社に行くのが嫌だろうと、会社員という身分を捨てることはできません。

まあ、私の場合は、会社の仕事以外の生き甲斐を見つけたのと、こうなったら会社の仕事は手を抜くだけ抜いて、金だけはできるだけふんだくってやろうという別の楽しみが生まれたので、まだココロには余裕はあるようです。いざとなったら、いつでも休職してやるし、とも思ってますしね。

本書の作者汐街コナさんは、自分が憧れていたデザイナーという仕事に就いたはいいものの、入社した職場はブラックそのものでした。残業は当たり前、週に何度かは完徹という状況が常態化。それでも周りが同じような状況でも弱音を吐かないし、仕事もきちんとしているので、自分だけ逃げるわけにはいかない。そしてある日、駅のホームで電車を待っている時に、「今ここで電車に飛び込んだら会社行かなくて済む」という考えにとらわれることになるのです。

私も似たような経験はあります。定時を過ぎてからが自分の仕事の時間。休日出勤は当たり前、週に二日は徹夜で、一番睡眠時間が長い場所は会社のソファ、なんて時期が1年半ほど続きました。さすがにその時は、自分でも信じられないようなミスが頻発し、自分という存在を根底から否定された気分になりました。ただ当時の私は30前だったし、体育会系出身者にありがちな、「自分の頑張りが足りねーからこんなことになるんだ」というように考えられるだけのエネルギーがありました。ですから、電車に飛び込もうなどと考えたことはありませんでした。もっとも、電車のあるうちに帰れるような状態の方がマレでしたがね。

で、世の中は、私みたいな脳筋バカの体育会系ばかりではありません。「せっかく入った職場を簡単にやめたくない」「好きな仕事なんだから試練は乗り越えるべき」「みんな頑張っている」「私だけサボったら迷惑がかかる」こんな思いにとらわれて、いつ果てるともないブラック環境で働くうちに、疲れが溜まり、無意識が反乱を起こして、カラダに異常をきたしたり、精神を病んだりすることになります。そして最悪の場合は自死に至ってしまうというわけです。

そんなことになる前に、まずは自分の周りにはいろんな道が広がっているのだということに気づきましょう、そして、様々な道が見えているうちに対策を講じましょう、というのがこの本の趣旨。

好きな仕事を手放すのは悲しいことかもしれませんが、少なくとも自ら死を選ぶよりはマシです。そして、会社員じゃなくたって、食っていく方法ならいくらでもあります。最終的には生活保護を受けるという道だってあります。何しろ死んじゃったらそこですべては終わりです。自分の人生が終わるだけではなく、遺された人々には悲しみという負の遺産まで残すことになります。

会社の仕事なんざ、所詮は食い扶持稼ぎ。飢えをしのげさえすればいいんであって、たかだか食い扶持稼ぎのために自分の命を懸けるなんてのは愚の骨頂。中には仕事が好きで好きで死ぬまで仕事していたいなんていう人がいるかもしれなけど、ご自由にどうぞ。私も、PCのキーボードをたたきながら死ねるのなら本望だ、と言いたいところだが、そこまで言うに値する作品なんかまだ書けていないので、今のところは、何とか食える状態になることを目標にしたいと思います。会社の仕事なんざ、二の次三の次だ。ちょっとでも負担が増したら、とっとと休んじゃいますからよろしくお願いしますね、管理職の皆さん(笑)