『依存症シリーズ』の二作目。
この作品は「正義の遂行者」としての側面にフォーカスして浜真千代という人物を描いている。一言で言ってしまえば、真千代を必殺仕事人として遇しているのだ。ただし、仕事人たちは多くの場面で悪人たちを一瞬のうちに葬り去るが、この作品で裁かれる悪人たちは、肉体的のみならず精神的にも、実に惨たらしい拷問を受けながら命を奪われる。
ストーリーは一人の男子大学生が何者かにスタンガンで襲われ気を失うところから始まる。ん、なんだ、いきなり不穏な出だしだぞ。もっともこのシリーズに平穏な場面はほとんど描かれない。描かれるとすれば、その後の残虐なシーンを引き立てるためのスパイスとしての挿入であって、平穏なシーンが物語の「主流」になることはまずない。
そして場面はいきなり変わる。今度は美人女子大生の死体が発見されたという知らせに、警察が緊張感を高めているシーンだ。殺された女子大生の死体はかなりひどい状況で、かなりの時間ひどい殴打を受けた末に殺されたと推測されると描写されている。
シリーズの読者であれば、両方の事案ともに真千代の息のかかった人物たちの仕業だろうとピンときてしまうと思うし、実際にその通りだということが後々語られるのだが。それではなぜ、女子大生は殺され、男子学生は拉致されたのか?この謎を少しづつ明らかにしていくことでストーリーが進んでいく。
とはいえ、ストーリーの大半を占めるのは冒頭で拉致された一人を含む三人の大学生への拷問シーンだ。三人の男子学生はいずれも両手両足の指を数本切り取られ、両手両足を厳しく結束された状態で一人ずつ同じ建物の中の別々の場所に監禁されている。この建物は海の近くにあり、周りに人家はあまりなく、夏場以外は訪れる人が極端に少ないという監禁に最適な場所という特徴を付与されている。そして、三人は傷の痛みを抱えたまま、水も食物も与えられない長い時間を過ごすという拷問をまずは与えられる。
目の前に水と食い物を並べられたら、親だって殺すという心境になったところで、監禁した人物から三人に命令が下される。それは三人のうちの一人の爪を残りの二人で剥がすという指令だった。三人は中学時代からの友人だったが、ここでその人間関係の闇が暴かれる。これも一つの心理的拷問だ。そしてこの心理的にも肉体的にも苦痛を与えていくという拷問はその後も繰り返されることとなる。
そしてその苦しみの中でなぜこの三人がこんな目に遭わなければいけないのかが、説明されていく。拷問を受ける人物の心中の独白という形で謎が明らかになっていく展開はなかなかに考えられていて読み応えがあった。拷問を受けて混乱する心理の中で、行きつ戻りつする謎解きには、読者をじらす効果もあり、早く次の展開を読みたいという気分にさせられた。盗みたいテクニックだ(笑)。この心理描写がこの作の最大の眼目と言って良いので、焦ったくはあるが読み飛ばすことのないよう、しっかり読んでいただきたい。
そして、ついに明らかになる謎。これは『監禁依存症』の結末と対をなす意外性を持ったものだった。流石にどんな謎だったかについてはヒントすら与えられない。是非とも本文に当たっていただきたい。
真千代が、単純な悪人ではなく、非常に複雑怪奇な人間であることをしっかりと示して次作に繋げていくというテクニックも盗みたい(笑)。で、やっぱりシリーズの進行通りに読んだ方が、より深く各作品を味わえたなぁ、と改めて思った。
