脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

自分的には「浜真千代ライジング」だった『依存症シリーズ』第一作目 『殺人依存症』読後感

 

何かの拍子にジャケ買いし、一気にその作品世界に引き込まれてしまったのが↓の一作。

www.yenotaboo.work

 

ちょいとググってみたらこの作品は櫛木理宇氏の『依存症シリーズ』の三作目だったらしい。このシリーズは2025年現在で4作目『拷問依存症』まで四作が上梓されており、まだまだ増えていきそうだ。

 

で、このシリーズにすっかり魅せられてしまった私としては、シリーズを最初から全作読んでみようと思い立ち、早速買い求めたのが標題の作。シリーズを通しての「主人公」、浜真千代の人となりが語られ、なぜ猟奇的な犯罪に手を染めるようになったのかが描かれる。

 

『監禁依存症』は浜真千代のパーソナリティーはすでに周知のものとして描かれていたので、ストーリーそのものは興味深く読めはしたものの、浜真千代の人物像に関しては隔靴掻痒の思いが消えなかった。そんな思いを、期待通りに見事に解消してくれたのが標題の作というわけだ。

 

標題の書のストーリーは一人の女子高生の姿を描くことから始まる。その女子高生は、通学で利用する電車の中で痴漢にあっても声ひとつあげられないという、やや内向的なキャラクターが付与されている。そして、そんなおとなしい女子高生をターゲットにするのが痴漢グループ。ネット上のサイトで同好の士を募って集まり、おとなしそうな女性を狙う卑劣漢たちの集まりだ。痴漢行為という共通目的のためだけに集まった集団で、お互いの正体は知らないという設定にもなっている。

 

痴漢グループは首尾よくターゲットを取り囲み、やりたい放題に女子高生の身体を弄ぶのだが、その行為を見逃さなかったのが一人の中年女性。彼女は痴漢グループの一人を取り押さえ、次の停車駅で駅員に引き渡そうとするのだが、痴漢グループは三々五々散っていって結局逃げられてしまう。中年女性は女子高生を学校まで車に乗せていくと持ちかけ、助けてもらった女性だからと信用した女子高生を拉致してしまう。そしてその女子高生は数日後に惨殺死体として発見される。

 

ここに登場してきた中年女性こそが浜真千代なのだ。そしてストーリーは浜真千代の生い立ちから現時点に至るまでの人生を追いかける形で展開していく。一方で「浜グループ」のターゲットは女性だけでなく男児にまで及ぶことも示される。

 

『監禁依存症』にも登場してきた刑事浦杉克嗣やその娘架乃、捜査に奔走する高比良刑事なども登場してくる。この作品で主に浜真千代を追いかけるのは浦杉刑事なのだが、その「戦い」の過程で、浦杉刑事の近所に住んでいた少女までもが殺されてしまい、そのことに責任を感じた浦杉刑事は警察を退職するという形で浜真千代に敗れてしまう。そして架乃の心にも大きな爪痕を残す。

 

先に浦杉刑事が警察を退職した後の姿や架乃が浜真千代に憎しみを感じる一方で惹かれてもしまうという複雑な心理を持っていることなどを知ってしまった私としては、その際に感じた曖昧さみたいなものが次々と明らかになっていくという、ちょっと逆転した謎解きを楽しむことができた。

 

シリーズ全体のストーリー展開とは別に、女子高生や男児といった弱者が、成人男子という「強者」たちの歪んだ性衝動の被害になり、徹底的にいたぶられ、抵抗すらできない絶望の中で死を迎えるという描写に衝撃を覚えた。普段の生活の中ではなかなか意識できないことだが、自然界の弱肉強食さながらの危険性が日常の中に容易に紛れ込む可能性があるということに気付かされたことは大きなショックだった。

 

というわけであと2冊、もう読んじゃっているので、近日中に読後感アップします。