Kindle渉猟中に、おすすめ本として表示され、題名の通り「ジャケ買い」した一冊。表紙のおどろおどろしい文字たちから、さぞかしドロドロした物語が展開されるのだろうな、と期待して読み始めた。
ストーリーは、二つのお話を軸にして進んでいく。一つのお話は弁護士小諸成太郎の息子在都(アルト、と読む。若干キラキラネーム入ってるかな?)が何者かに誘拐されたという事件。成太郎は「敏腕」弁護士で数多くの事件で無罪あるいは、科料の軽微化に成功している。特に性犯罪の案件に強く、依頼は引きも切らない状況だが、その分被害者やその家族たちからの強い恨みを買っているというキャラ設定だ。このキャラ設定はかなり念入りになされている。被害者が和姦の成立しない幼い年齢であっても無理やり「合意の上」だとか「被害者の方から誘いをかけた」だとかと無理やりにこじつけて、話の流れをそちらに持っていく法廷戦術を取る。その過程で被害者及び被害者家族は手酷い「セカンドレイプ」を受けて、心をボロボロにされてしまう。実によくできた、憎たらしいキャラだ。恨みを買って当然、という人物像の描き方、大いに参考になる。
もう一つは女子大生浦杉架乃のお話。彼女は誘拐事件により弟を失った上に、やはり幼い時代にレイプ被害にも遭っている。弟の誘拐殺人事件はいまだ解決しておらず、彼女はその犯人と目されている浜真千代の行方を追っている。そしてやはり事件に関係ある”KikI"なる人物には魅せられている。浜とKikIは同一人物である可能性が高いことが架乃のモノローグの中で語られているが私はここで???となってしまった。読み終えてからちょいと調べてみて分かったのだが、『監禁依存症』は『殺人依存症』という小説の続編として書かれたものであり、『殺人依存症』の世界観を理解していないと???となってしまう部分が多かったのだ。浜とKikIの人物像やらその関係性なんかはその最たるもの。読んでいなくても一応話の筋は通っているが、スムーズな理解を妨げられてしまった。近々『殺人依存症』の方も読んでみなければなるまい。
さて、ストーリーは在都誘拐事件と架乃の浜特定のお話が混じり合う形で進んでいく。このストーリー展開と、緊迫感こそがこの小説の最大の味わいどころなので、是非とも本文をお読みいただきたい。一気にストーリーに引き込まれてしまい、最後まで読んでしまわざるを得なくする文章は見事というしかない。そして訪れる意外な結末。おお、そういう決着の付け方があるのか、とこちらにも感心させられた。こればっかりは読んでください、としか言いようがない。
ストーリーの奇抜さ以外には、性犯罪をめぐるセカンドレイプ、女性のセクシュアリティー、性犯罪の罪科が低すぎるのではないかという一朝一夕には答えの出ない重い問題提起がなされているところも興味深い。特に、年少者の性被害は、被害者のその後の人生に暗く、重い影を落とすことになってしまうことが多い。エロ教師が盗撮画像をネットにアップしているくらいなら可愛いもので、文字通り「魂の殺人」と言われるような深刻な事例も少なくない。私の幼い姪っ子二人がもし被害に遭ってしまったら、私は犯人を殺してしまうかもしれない。冗談ではなくそう思った。
なおこのシリーズにはもう一冊『残酷依存症』ってのもあるらしいので、そちらも是非読んでみたい。どれが一番最初の物語なのかは慎重に見極めないといけないが(笑)。
