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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

まだまだ続きそうなホークスの天下を裏付ける一冊 『ソフトバンクホークス 4軍制プロジェクトの正体〜新世代の育成法と組織づくり〜』読後感

 

日本にプロ野球というものが誕生してから90年余。その間「盟主」と呼ばれる球団は幾たびかの変遷を経た。1970年代半ばまでは巨人、80年代は西武、そして現在その座にあるのはソフトバンクホークスだ。特に2000年代に入ってからの成績が凄まじく、リーグ優勝9回、日本シリーズ制覇は8回を誇る。中でも2019年、20年は「自称」盟主の巨人を2年連続して4連勝で破るという、まさに圧倒的な勝ちっぷりを見せて「実質的」な盟主であることを強烈に世間に知らしめた。

 

一体、なぜここまでホークスは強くなってしまったのか?一つの要因は早々に3軍制をしき、隠れた素材を発掘・育成して次々と主力選手にまで育て上げた育成力の高さだ。中でも2010年の育成ドラフトでは千賀滉大(現ニューヨークメッツ)、甲斐拓也(現巨人)、牧原大成を輩出し、「本番」のドラフトでも滅多に見られないほどの当たり年となった。親会社が、世間や業界の「常識」に囚われない新機軸を次々と打ち出して成長してきたダイエーソフトバンクだっただけあって、次々と新しい手を打って、それが見事に当たり続けている印象がある。

 

そんなホークスが2023年から、他球団に先駆けて導入したのが題名にもなっている「4軍制」だ。素人考えでは、1軍=実働部隊、2軍=育成の場、3軍=2軍のレベルに達していない選手(主に育成契約の選手)の鍛錬の場とカテゴライズできると思うのだが、そこにあえて「4軍」という舞台を設けることにどんな意味があるのか?で、4軍ってのは日々一体どんな活動をしているのか?3軍との明確な違いは何?なんてな疑問が、本の題名を見た瞬間に一気に頭に浮かんでしまったので衝動DL&即読みした。

 

上記の私の疑問に関する答えは大体この本の中に書いてあったので、ご興味ある方は是非書籍をご一読いただきたい。ここでは、3軍と4軍との差は、待遇面と「プロ野球」という職業に関する技術の習熟度の差であるとだけ大まかに述べておくにとどめておくにする。

 

他の球団が、費用面を含め、3軍制ですら持て余し気味だというのにどうやったら4軍制がうまく機能するのか?実用面の特徴は二つ。

 

一つは最新機器の導入と、その活用による選手の能力の客観的数値化だ。ホークスの練習場には1機1億もするような米MLBでも採用しているピッチングマシンや投球の回転を測定するが何台も用意されているそうだ。流石にオーナーが米大統領に「マサ、ぜひアメリカに多額の投資をしてほしい」と懇願されるだけのことはある(笑)。例えば多くの球を放れば疲れてしまい、クオリティーの落ちるバッティングピッチャーを多数雇っておくよりは、何百球何千球と投げても同じクオリティーの球を投げられるピッチングマシーンの方が結局は安くつく、という「合理的」な考え方はIT企業が親会社でなければ出てこなかった発想だろう。選手の能力の数値化も然り。打者は各ステージから次のステージに上がる際には実技の「検定試験」を受け、合格する必要があるそうだ。今まで情実やら、2軍のコーチや監督のカンというあやふやな基準であったものが可視化され、明確な基準が設けられたことは、もしかするとプロ野球界の一大転機かもしれない。

 

二つ目は、前項とも若干カブるが、1軍から4軍まで指導の方針が一貫しているということだ。今までは2軍でいい成績をあげて1軍に上がってきても、一軍のコーチの方針に合わずに結局一度も出場せずに2軍落ちなどということが日常茶飯事のごとくあった。技術面でも1軍のコーチと2軍のコーチの指導がまるっきり違うなどということが「当たり前」だったし、いまだにホークス以外の球団はこの旧態依然とした体制を改めていないだろう。ホークスではこうした弊害をなくすためにコーディネーターという役職を置き、一貫した指導方針がブレないよう努めている。これも一つの革命と言って良い。特に、成績の良い選手をカネにあかせて集め続けて、若い有望株を散々腐らせている上に、なかなか勝ててもいない「自称」盟主球団には是非ともこの姿勢を見習ってほしいものだ。

 

自然界には「強いものが生き残るのではない、生き残るのは環境に適応したものだ」という言葉がある。ホークスのこの姿勢はまさに、環境に適応しようと努力している姿であり、そして今のところその戦略は上手くハマっている。キツい練習を無理やりやらそうとしても、現代の若者はついてこない。したがって、最新の機器を揃え細かい指導体制を整えた上で、選手が自主的に努力するのを待つ。その上でダメな奴は容赦無く切る。球団経営のみならず、一般の企業の経営、人材教育についても参考になる点が多かった一冊だったと思う。残念ながら、管理職でもなく、会社という組織には戻りたくもない私にはこの本から得た知識を活かす場はないのだが(苦笑)。