脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

結局ドラマから読み取れたモノ以上のことは窺い知れなかったノベライズ作品 『相棒season13(上・中・下)

 

 

 

つい先ごろseason23が終了した人気ドラマシリーズのノベライズ作品。歴代相棒の中で最も歳が若い設定で、世間に最も衝撃を与えた「卒業」の仕方をした甲斐享出演最終シリーズのものだ。

 

甲斐享が特命係を去ることとなった「ダークナイト」事件はファンに大きな衝撃を与えた。「トラウマになった」とさえ言い放つ文筆家の文章もネット上で読んだ。このシリーズ終了後、享役の成宮寛貴氏がスキャンダル絡みで芸能界を引退したこととも相まって、因縁付きの作品になってしまったイメージがある。つい最近、成宮氏はネット配信のドラマで俳優復帰を果たしたし、作品世界の中では享の息子が登場したりと、再登場に向けての「雪解け」が進んでいるようではあるが、何しろドラマの中では実刑を喰らっている犯罪者であるが故、亀山薫が果たしたような超ウルトラCで特命係に舞い戻るようなこともできない。復帰するとすれば、ネット配信特番から生まれた私立探偵コンビの仲間に入るか、チャンドラー探偵社でマーロウ矢木の相棒となるか、あるいは週刊フォトスの記者にでもなって事件に絡むってのが現実的なところだろう。次のシーズンの正月特番あたりにちょいと顔を出すのではないか、などというお話もドラマウォッチャーからは出ているが、まあそうなれば、ファンとしてはちょっと嬉しいのは事実だ。

 

さて、私も「ダークナイト」に関しては大いにショックを受けた一人ではある。若いが故のまっすぐな正義感で、時には暴走しそうになるカイト君をしっかりと受け止めて、その成長を促し、見守る杉下右京という相棒の構図はなかなかに危うくて魅力的だった。その、カイトくんの真っ直ぐすぎるまでの正義感がどこでどう捻じ曲がって、実際に暴力を振るう「ダークナイト」になっていってしまったのか?ドラマでは父親である警察官僚甲斐峯秋による推察という形でのカイトくんの心理描写、主席監察官大河内による事情聴取でのカイトくん自身の心情吐露でその解明に努めてはいるのだが、カイトくん自身が「自分でもよくわかりません」と語っている通り、視聴者側にもなんだかモヤモヤしたものが残った状態だ。もう10回以上見返したのだが、「これが答えだ」とズバリ言い切れる結論は出ていない。その辺のことがノベライズ本には書いてあるのではないか?という期待を込めて読んでみたのが↑の3冊だ。

 

結論から言うと、ドラマ視聴から感じたもの以上の収穫はなかった。すでにドラマとして完結した作品に小説で新しい解釈をつけると言うのは文字通りの「蛇足」だという製作者たちのポリシーは感じられた。

 

作品の内容の感想とは別に「ノベライズ作品」というものの作り方については、文筆業を目指すものとして、それなりの見識を得た。モノを書く身から見るとこのノベライズ作品ってのは結構「オイシイ」のではないか?ストーリーはできているし、ドラマのシナリオのト書きにはかなり詳細な情景描写がされているはずだ。何より不明な点があればドラマをもう一回見直せばいい。ドラマではシーンの登場者のセリフで説明されていた状況が、小説では地の文で説明されているといったような細かい違いはあるものの、シナリオに沿って文章を書き直していけば、自然に小説になっていってしまう。もちろん、ドラマと齟齬をきたさないように注意しなければならないと言う大前提はあるものの、自分で一からストーリーを構築するのに比べればはるかに簡単に小説が出来上がってしまう。この仕事、ぜひ私にやらせてください!!!(笑)

 

ノベライズ作品の著者は碇卯人氏で、ミステリー作家鳥飼否宇氏の別名義だそうだ。出せばそれなりの売り上げが約束されている作品を持っているというのは実に羨ましい。自分も早く、こういうオイシイ仕事が回ってくるような文筆家にならなきゃいかんな、と読む前の目的とはおよそかけ離れた結論だけが私の中には残った。