脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

低迷する埼玉西武ライオンズをどう改革するのかについての意見を聞いてみたい 『最後の名将論』読後感

 

 

選手、指導者として堂々たる実績を持ち、野に下ってからは鋭い論点でズバリと球界に物申してきた広岡氏の直言集とでもいうべき一冊。
氏のプロ野球人としての原点となった巨人軍に対する厳しくも愛ある言葉に始まり、現在の日本プロ野球界の様々な問題にズバリと切り込んでいる。

まあ、この方の言動、そして文章に関してはいちいちもってごもっとも、という言葉しか浮かんでこない。理屈は通っているし、実績も残しているから反論のしようがないのだ。ただし、この方の「海軍式」野球論には昭和世代の私でさえ「ちょっと今のご時世にはそぐわないんじゃないの」という疑問が浮かんでこざるを得ない。氏の提唱する「海軍式」野球とは、一番の責任者、つまり監督のいう通りに船員、すなわち選手たちが動かないと、船が沈んでしまうという考え方。「黙って俺について来い」ではないが、勝利を目指すという方針の下に、選手たちの役割を決め、その役割の完遂を求めるというものだ。ちょっと目、今一番バッシングされやすい「軍隊式」の考え方、鍛え方に思えてしまう。

 

しかし、広岡氏は指導者の指導にも「正しさ」が必要だとも説いている。その正しさとは基本の徹底であり、試合でベストパフォーマンスを叩き出すための体調管理でもある。この正しさを選手に浸透させるべくして生まれたのが管理野球で、面白くない野球の典型のように言われてしまっているが、プロとして勝利するために突き詰めていった方法としては理にかなっている。たまに打つホームランで勝つよりは、1人のランナーを大切に進塁させて確実に点を取る野球の方が緻密で好ましいと、特に最近の巨人を見ていて思う。

さて、こんな広岡氏の目に、指導者としての古巣でもある現在の埼玉西武ライオンズはどう映っているのだろうか?浅村、森、山川といった主力打者たちが毎年のようにFAで流出してしまっているが、その対策ができていない。代わりの長距離砲をどう育てるのか、あるいは長距離砲に頼らずいかにつなぐかのチームにするのかの方針が定まっておらず、チームは最下位を独走して、監督が休養に追い込まれるという緊急事態。こういう時こそ広岡氏がどのようにチームを変革するのかお手編み拝見といきたいところなのだが、広岡氏は御歳90歳を超えたご長寿さんであり、グラウンドで実際の指導に当たるのは難しいだろう。ご自身も現場復帰はないと度々名言してもいる。しかしながら、この方の知識、経験を埋もれさせるのはいかにも惜しい。日本プロ野球界にとっての損失と言っても良い。

 

そこで提唱したいのは、松井稼頭央氏に広岡氏の知識を伝授いただくということだ。松井氏はプロ入り後に投手から野手に転向し、同時にスイッチヒッターにも挑戦し、見事に2000本安打を達成した名選手だ。MLBに挑戦したことで、アメリカの野球についての知見もある。残念ながら、今シーズンは記録的な多さの敗戦を積み重ねてしまったため、途中休養という形で監督を辞めざるを得なくなってしまったが、広岡氏に指導者としての技術を一から学び直せば、再浮上のチャンスは十分にあると思う。松井氏が成功を収めれば、「一度失敗した指導者は二度と起用されない」という、この国のプロ野球界の悪しき暗黙の了解事項に風穴を開けることにもつながる。最後のご奉公として、ぜひ松井氏(難しければ別の方でも良い)を後継者に指名し、その哲学を継承いただきたいものである。