脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

「他人の噂も七十五日」になりつつある今だからこそ読んでおきたい 『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』読後感

 

昨年7月の安倍元総理狙撃事件以降、世の中の注目を集め続けてきたのが世界平和統一家庭連合(以下、家庭連合。旧略称統一教会)と自民党議員との癒着問題。狙撃犯はいわゆる宗教二世で、母親が家庭連合に長年にわたり多額の献金をし続けたおかげで家庭が崩壊状態にあったことへの恨みが動機と自白したことから、家庭連合と政治家の癒着に注目が集まった。

 

岸信介安倍晋太郎安倍晋三の「自民党ロイヤルファミリー」は特に強い癒着があったと考えられ、実際に晋三氏は殺害されてしまうに至ったのだが、このファミリー以外にも自民党議員は数多く家庭連合と癒着している。いくつかの例はマスコミで大々的に報道もされ、山際大志郎氏は閣僚辞任に追い込まれた。また、組織の名称を統一教会から世界連合に変更する際に、それを認可する立場である文科相であった下村博文氏は総裁候補から党の片隅に追いやられる存在になった。もっとも、下村氏の場合は、そもそも総裁選に出馬したのが無理矢理で、投開票の結果世の中に人望のなさを露呈しただけの「自爆」で、もとから党の中枢に食い込めるだけの実力はなかったようだが(笑)。

 

著者鈴木エイト氏は大学在学中から家庭連合をはじめとするカルト宗教に入信した方々の救済に走り回ってきた人物。勧誘の実態や活動の実情を事細かく追いかけ続けて数十年という筋金入りだ。教団側からは「危険人物」とされており、鈴木氏が取材に訪れると予想される場に参加している教団関係者には「注意報」まで発せられるという。

 

それだけの人物が著しただけあって、教団の活動に関してはかなり詳細にレポートされている。まずは教団との関係を窺わせる客観的な証拠を豊富に提示。そしてその証拠をもとに、取材を申し込んだ際の議員本人やスタッフの対応を詳細に記すとともに、議員が開く各種のイベントにいかに多くの世界連合信者たちが送り込まれているのかが語られている。自民党を応援するために「自主的」に組織された学生思想団体の活動にも触れている。題名の通り「3000日」にわたり取材を重ね、自民党と世界連合との蜜月ぶりを示した功績は大きいと思う。事実の羅列が多くて少々読むには疲れたが(苦笑)。どの議員がどれだけ世界連合から恩恵を受け、その政治活動においてどれだけその「恩」に報いてきたのかについては是非とも本文にあたっていただきたい。

 

さて、鈴木氏は一時期ほぼ毎日のようにTVをはじめとするマスメディアに出演して、世界連合の問題点を指摘し続けていたが、最近あまり姿を見かけなくなった。WBC熱の高まりや先行きの見えない経済状況、そろそろ出口が見え始めたコロナ禍など、世界連合をめぐる問題以外にも注目すべき話題が出てきたこともあるが、一番の要因は社会全体の関心の低下である。「救済法」が制定され、一定の成果があったという認識に基づく関心の低下であろう。

 

ただし、宗教二世の問題を告発し、国会にも証人として出席した小川さゆり(仮名)氏が「救済法はあくまでもスタートであって、議論は継続してほしい」と訴えている通り、教団そのものが今後も存続し続ける以上、従来の信者たちの被害も継続し続けるし、新たな被害者も発生していく。教団が解散する、または「救い」をカネ抜きでもたらす団体に生まれ変わることが最終目的となろうが、まずは自民党と教団の癒着を断ち切ることが次の目標となるだろう。自民党は連立政権を組む公明党との関係から「政教分離」に対しては消極的だし、勝共連合、ひいてはアメリカとの繋がりもあるので、完全に癒着を断ち切るのは非常に難しいが、我々にも「教団から支援されている議員や候補者には投票しない」という武器はある。その武器を行使するための参考になる一冊であると思う。