脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

物語の終わりを予感させる一作 『座頭市御用旅』鑑賞記

 

26作ある「座頭市シリーズ」の23作目。

 

言わずと知れた、ダークヒーロー座頭市の居合い抜きの妙技をいかに鮮やかに魅せて、観客にカタルシスを与えるかが生命線のこのシリーズ、いい加減ネタ切れになってきた作品だったようだ。

 

ストーリーのフォーマットはもう決まっている。あとはテリング、すなわちキャストや舞台設定の細部にこだわるしかない。

 

というわけで、敵の親玉鳴神の鉄五郎に三國連太郎野州・塩原の宿の治安を預かる十手持ち藤兵衛に森繁久弥というビッグネームを配役。さらにコメディーリリーフには笑福亭仁鶴正司敏江・玲児という当時の人気者を持ってきている。他にも鉄五郎の子分に石橋蓮司蟹江敬三といった、後に個性派俳優としての地位を確立する面々、市と剣技を競うことになる役回りの浪人、相良伝十郎に高橋悦史、ヒロイン的な役割のお八重に大谷直子と当時の新進気鋭の俳優陣を起用している。

 

さらに、テーマソングはいわゆるポピュラーソングというか当時でいう歌謡曲ではなく、浪曲師をフィーチャーしており、浪花節独特の重苦しい雰囲気を作品全体に纏わり付かせることには成功している。

 

三國連太郎氏は『飢餓海峡』で見せたような複雑な悪役ではなく、単純に極悪非道なヤクザの親分という役どころだったが、ギラギラした表情と目力で典型的な悪役を演じ切っていた。森繁久弥氏はコミカルさを封印して、義に厚い十手持ちを見事に演じていた。

 

その他の俳優陣もそれぞれの役割を演じ切って見事な物語として完結してはいたのだが、いかんせんフォーマットが定型化しすぎていて、新鮮味には欠けた。そろそろ物語を終える時期が近づいたのだということがはっきりしてきた一作だったように思う。

 

個人的には、シーンの一部として、往年の敏江・玲児のどつき漫才をちらりと鑑賞できたことがちょっと嬉しかったな。