脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

座頭市シリーズの世界観ど真ん中の一作 『座頭市血煙り街道』鑑賞記

 

 

26作制作された『座頭市』シリーズの17作目。どうあがいてもマンネリ感は否めないが、ここは「偉大なるマンネリズム」ってやつに支えられた連ドラやシリーズものの映画が散々ヒットした日本だ。故志村けん氏が『七つの子』の替え歌(例のカラスの勝手でしょ〜、ってやつ)をいいかげん長くやりすぎてやってる本人が飽きたんで、ある週の放送で替え歌を歌わなかったら、TBSに抗議が殺到したというお国柄では、一度確立した「お約束」は本当に飽きられるまで続けることを要求されてしまう。

そんなわけで、この作品は、題名にも書いた通り「座頭市シリーズ」の世界観ど真ん中の作品だ。悪人相手には容赦はしないが、女や子供などの弱いものが虐げられていると我慢できないで、我が身を顧みず助けてしまう情け深い人物、っていう市のキャラクターを全面に押し出した一作だ。

 

物語の発端は、ある日の宿で、病んだ母親と幼い良太という男の子と相部屋になってしまったこと。この母親は前原にいる良太の父親庄吉のもとへ良太を送り届けて欲しいと市に願ってそのまま亡くなってしまう。袖触り合うも多生の縁とはいうものの、単に相部屋となっただけの子供の面倒をみることになってしまう市はいかにもお人好しだ。

 

お人好しついでに、行方知れずになっているという庄吉を探し出すことまでいつの間にか請け負うことになってしまう。焼き物の絵師である庄吉は、土地の代官鳥越とヤクザの権造に軟禁され、ご禁制の金粉、銀粉を使った春画焼き物を作らされていたのだった。というわけで、あとはお約束のチャンチャンバラバラで、市が悪党どもを斬りまくるという大殺陣が展開される。結末は言わずもがな。

製作陣も色々考えていたとはみえて、小沢栄太郎小池朝雄といった渋い名優を悪役に使ってみたり、朝丘雪路や高田美和といったキレイどころを揃えたり、劇中で当時三人娘で売り出していた中尾ミエに歌を歌わせてみたりと、さまざまな工夫を凝らした痕はうかがえる。

 

中でも今回の最大の特色は、前原の代官鳥越の悪事を暴くために派遣された隠密である赤塚多十郎に近衛十四郎(言わずと知れた、故松方弘樹目黒祐樹兄弟の父)を配したこと。私は近衞氏といえば『素浪人花山大吉』の二枚目半的なキャラの印象が強いのだが、この作品では正統派の二枚目を演じていた。目黒祐樹を三度くらい湯通したようなさっぱりとした二枚目ぶり、カッコよかったなぁ(笑)。

 

最後の最後この多十郎と市も結局は対決することになるのだが、剣の戦いではないところで決着がついてしまう、とだけ言っておこう。結末はぜひ本編をご覧いただきたい。まあ、お約束と言えばお約束の結末ではある。