脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

オチは悪くなかったが、結局はただのラブストーリー 『ダイヤモンド・イン・パラダイス』鑑賞記

 

 

ジェームズ・ボンドを「引退」したピアース・ブロスナンの引退後の初主演作。ボンドとは真逆に、秘宝とでも言うべき大きなダイヤばかりを狙う泥棒マックスを演じている。

 

FBIの捜査官スタンが厳重な鍵のついたジュラルミンケースを抱えて車に乗り込むところからストーリーがスタート。スタンは車に乗りながらも、プロバスケットボールを観戦中のマックスを監視しているFBIの捜査本部とずっと連絡を取り続けている。ジュラルミンケースの中には、マックスが狙う大きなダイヤモンド(ナポレオンの剣に取り付けられていた、三つの宝石のうちの二つ目、と言う設定)入っており、マックスがその強奪を目論んでいるが故に極度に緊張しながら搬送しているという描写だ。

 

マックスはちょっとした隙(実はマックスの演出)をついて監視の目を逸らすと、泥棒の相棒でもあり、恋人でもあるローラの手助けで、スタンの乗った車を遠隔で自動操作し、まんまとダイヤを奪ってしまう。

 

ダイヤを売れば一生贅沢に遊んで暮らせるだけの暮らしが手に入る。そんなわけでバハマでローラと優雅に暮らすマックス。ただし、たった半年でその優雅な暮らしに飽きてしまってもいる。

 

身に染み込んだ「泥棒根性」の虫が騒ぎ出した、ちょうどその時にマックスによって失態を演じさせられたスタンがバハマに出現。マックスが件の強奪事件の犯人であることはわかってはいても、証拠がなければ逮捕はできない。そんなわけで、酔っ払ってマックスに絡んだり、恨み言を言い募ったりするスタン。優雅な暮らしを楽しむマックスと、そこに絡むスタンをそのまま描いたのでは映画にはならない。

 

実はバハマには近日中に豪華客船が来航することになっており、その豪華客船にはナポレオンの剣についていた3個目のダイヤ積載されていて、スタンは寄港地ではそのダイヤの展示会が開かれるという知らせを持ってきたのだ。

 

生活に倦んでいるいることもあり、大いに食指を動かすマックス。ただし、ローラは、その強奪の困難さに危険を感じ、マックスに強奪を諦めて、安らかな日々を過ごすことを懇願する。

 

恋人の願いと、自らの欲求の間で揺れ動くマックス。スタンは陰に陽に煽ってくるし、地元のヤクザの大物ヘンリーも一枚噛ませろと乗っかってくる。スタンと「できてしまった」地元警察の女刑事ソフィーも絡んできて、マックスの周辺は大混乱。しかし、最終的にはローラの言に従うことにしたマックス。

これで終わってしまってはやっぱり物語として成立しない。結局マックスはローラに隠れて色んな策を巡らし結局はダイヤの強奪に成功する。ただし、警備方法には異議あり。それこそ蜘蛛の糸のように赤外線アラームシステムを張り巡らしているのに、展示台のちょうど真上だけはすっぽりとそのシステム対象外になってるのはなぜ?んで、なんで都合よくそのちょうど真上に排気ダクトが通ってんの?どう考えたってご都合主義でしょ、これ。船の周りの警備だってもっと厳重になってていいはず。海から忍び込んでくる以外にないんだから、ボートの2台も出して、巡回させるとか、船のヘリに数メートルおきに人を配置しておくとか…。それをどう出し抜くのかが、泥棒の腕の見せ所だし、映画の一つのキモにもなると思うのだが…。

 

さて、最終的にダイヤを奪ったマックスだったが、自分との約束を破ったことに腹を立てたローラはマックスのもとを去っていってしまう。で、製作者の考えた1番のこの映画の見せ所がここ。バハマから飛び立とうとする飛行機の搭乗口でローラに追いついたマックスは、今後一切悪事には手を染めないと宣言した上でプロポーズ。最後はラブラブになって見事に大団円。

なんだこの予定調和は?ただ、一組のカップルが喧嘩別れしそうになって、男が謝り倒して元の鞘に収まっただけって話じゃねーかよ。んで、残りの生涯を二人仲良く暮らしましたとさ、って市原悦子にでもナレーションさせるつもりかよ、おい?

 

救いは最後の最後でどんでん返しのどんでん返しがあること。最後の最後のオチだけはなかなか洒落ていると思った。同時に、「スマホ化」が進んでいる自動車は、今後、遠隔でいくらでも操作できてしまうようになってしまうという恐怖感も感じた。