脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

支離鬱々日記Vol.135(お題と長距離通勤の日々)

今週のお題「秋の歌」

 

まずはお題から。

 

秋の歌といえば私の一番は『風立ちぬ』だ。

 

 

好きなアイドル松田聖子と好きなミュージシャン大瀧師匠がタッグを組んだ一作。ポッキーのCMソングにも起用された。作詞は松本隆氏で歌詞の中にストーリーと全く関係なく「すみれ ひまわり フリージア」という単語の羅列が入ることも話題となった。同名のアルバムに収録されている『一千一秒物語』は大瀧師匠の松田聖子への提供作としては、私の一番好きな作品である。

 

この曲のひとつ前のリリースが『白いパラソル』(コンサートなどで、♪お願いよ〜の後にオーディエンスの「セイコー!!」の大声援が入る定番曲)で、この曲の後は高校の音楽の教科書にも載ってしまったというユーミン作品『赤いスイートピー』という大ヒット作品なので、この二曲に挟まれた『風立ちぬ』は若干エアポケット的な印象があり、ファンの間での人気は決して高くないが、私は松田聖子といえば『風立ちぬ』である。大瀧師匠の秋の爽やかさと薄寒さを同時に感じさせる、いかにもな曲調とアレンジ。派手派手なアイドルから一歩大人の女性に踏みだした感のあった当時の松田聖子の雰囲気にはぴったりだった。今から考えると、実にうまく演出したものだと思う。

 

今週は二度通勤で上京した。車中でほとんど爆睡しているとはいえ、やはり片道2時間半の道中は長いし疲れる。以前なら二時間もあれば文庫本の一冊くらい読んでしまえたんだが、今はその集中力もない。体力の低下をつくづくと感じる50代半ばの日々である。

 

通勤に持って行く本を選ぶのは一つの楽しみである。書斎の、でかい本棚に無秩序に並んだ、大量の本の中から、その時々の気分で本を引っ張り出すのは至福の瞬間の一つだ。何しろ読みたいと思った本ばかりの山なのだから。ここのところ、ついつい「心の持ちよう」みたいな内容の本ばかり読んでしまっているが、そろそろきちんとした物語の一つも読みたいところではある。いざ読もうとすると、その後に書くことを自分自身に義務付けている読後感のことまで考えてしまってついつい二の足を踏んでしまうことが多いのだが…。まあ、時間はたっぷりあるので、散々迷って、ぼちぼちと読んで、書いて行く事にする。

 

さて、先日の通勤電車内で少々心がざわついた出来事があった。

 

帰りの電車の中のことである。私はドア横のコマイヌポジションをとり、本を広げていた。コマイヌのトイメンには母親と小学校低学年(母親がランドセルを持っていた)の女児、乳母車に乗ってはいるが活発に言葉を発していたからおそらく3歳児くらいの男児の3人連れがいた。

 

女児は別に騒ぎ回ってはいなかったが、吊り革に手の届く身長はまだないし、一番手近なポールの前には弟の乳母車が陣取っていたしで、非常に不安定な状況のまま、電車の揺れに任せて、あっちにふらふらこっちにふらふらしている状態だった。私は彼女の状況を目の端で捉えながら、読書を続けていた。

 

ある時、電車が大きく揺れ、それに伴ってよろめいたその女児はかなりの勢いで私の足を踏んづけた。思わず「痛っ!」と声を上げてしまったほどの勢いだ。女児は「やばい」という言葉を貼り付けたような表情で私を見たが「ごめんなさい」の一言はなく、すぐに別の方向を向いてしまった。母親は、男児を適当にあしらいながらスマホをのぞいていて、女児の不始末に気づくそぶりもない。私は足が痛くもあったし、謝るそぶりも見せなかった女児の態度と、女児の状態に無関心な母親に腹が立ったので女児を捕まえて「君ね、今おじさんの足を踏んだんだよ。おじさんは痛い思いをしたんだ。その事についてどう思うの?」とでも問いただしてやろうかと思ったが、その後に起こるかもしれない厄介な事に思い至って結局何も言わなかった。

 

こういう無責任で無自覚な親は、自分のガキの不始末は棚に上げて、「乱暴な大人に言いがかりをつけられたひ弱な親子」を演じるに違いないと思ったからだ。次の駅で降りて、どこかの部屋に入って事情を聞かれて、とか考えるだけでうんざりしたし、1日の仕事を終えた後にそんな事態に対処できるエネルギーもなかった。

 

私はその日すでに1回怒りを感じた後でもあった。上司が私のパニック状態を鑑みる事なく、次から次へと仕事を言いつけてきた上に「休暇が終われば当然仕事が溜まっているのは予想できた事なんだし、私の言っている案件の方が重要性が高い」みたいなことも言われたからだ。私は流石に少しムッとして「月初のこの時期にやることは決まっていて、その仕事は非常に工数がかかるんです。その上に新しい案件ばかり次から次へと言いつけられたらそれはしんどいですよ」と冷静に言い返した。「休みを取ったことを理由にしてるんじゃねーわ。そもそもこの時期にはやることはたくさんあるんだし、私としてはその仕事を最優先にしているだけだ」という言葉もでかかったが、それは飲み込んだ。というわけで少々腹膨れる思いも持ってはいた。

 

女児の、足を踏んだ事に対する私への謝罪がなかったことで、すでに持っていた怒りの種火が少し大きくなった。「うーん、ここで一言言ってやるべきか?それともこのまま『大人の対応』で終えるべきか?」などと逡巡しているうちに次の駅でその親子は降りていった。後悔したような、ほっとしたような…。いずれにせよ余計な疲れだけは増した一件だった。「どうせあんなガキは碌な大人にならない。タチの悪い男にでも引っ掛かってDVでも受けてろ!親も親だ。せいぜい悲惨な老後を迎えろ。いつかどこかできっと報いがあるからな!!」と心の中で吐き捨てておいた。

 

これだから電車には乗りたくないし、電車に乗らなければ行けない会社になんぞ行きたくないのだ(苦笑)。ま、ブログのネタは一つ拾ったし、家の快適さを再認識したしで悪いことばかりじゃなかったかな。駅まで車で迎えにきてくれていた女房の顔を見ながらようやくそう思うことができた。