脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

人間の敵はウイルスか?それとも人間か? 『コロナとバカ』読後感

 

コロナとバカ(小学館新書)

コロナとバカ(小学館新書)

 

 買うまい買うまいと思いながら、毎回毎回買わされてしまうのが、週刊ポストの連載をそのまんま載っけた、出版社とタケちゃんにとって二度オイシイこのシリーズ。相変わらずアコギなマネしてるな、と思いながらも、本屋でレジに並ぶ気恥ずかしさみたいなもんがないと、結局電子書籍で手に入れちまう。

 

内容はっていえば、まあ、いつも通りの世相斬り。去年の今頃から、今年に至るまで、世間に大きな影響を与えたコロナに関しての世間の人々の行動ってやつにツッコミを入れまくる。

 

ちょっと前までは「日本では水と安全はタダ」なんて神話がまことしやかに語られてたけど、水はちょっと前からはカネ出して買うのが「普通」になっちまったし、安全に関しても今回のコロナ騒動で、一気に嘘っぱちだったことがバレちまった。

 

人間に害なす、強力なウイルスの出現そのものは誰にも責任は問えない(中国が生物兵器として開発したなんて噂もないではないが…)んだが、問題なのはウイルスに感染した人へのケア体制。1億3千万人からの人口を抱えてるってのに、高々1万人が感染しただけで、事実上医療崩壊に近い状態にまで陥った。現場の方々が目一杯尽力していたというのは痛いほど理解しているし、いくら感謝してもし足りないくらいの思いはある。少し大きな感染症の波が襲ってきたくらいでオタオタするような医療体制しか構築できていないことが問題だ。

 

今回も既往症のある病人だけで手一杯なら、オリンピックの選手村でもなんでも開放して、病床に充てるくらいの措置はできたんじゃねーのか?昨年4月の時点で、世界各国の感染状況の深刻さ考えりゃ、五輪の開催なんて到底無理なんだってことは、報道されてる情報見ただけだってわかるってのに、選手の受け入れに問題が残るだの、その後の資産価値が下がるだの、理由つけて開放に踏み切らなかった。誰も責任取りたくないってのがミエミエなんだよ。洪水起こしてて、すぐにでも石積んで止めなきゃいけない事態の時に「あの山崩したら景観が損なわれる」なんて理由で放置するバカがどこにいるってんだ?そういうバカが支配してたのがあの当時の日本だったわけだ。あの時から、トップの顔は変わったけど、やってることは変わらねーな。身内から、虎の威を借る狐みたいな存在が出てきて悪さしたところまでそっくりだ。

 

もう一つ、問題はある。ウイルスの発生に関しては誰の責任でもないとさっき書いたが、ウイルスに感染した人やウイルス感染の危険性行動を取る人をバッシングする行為、いわゆる「自粛警察」なんてのはまさに、バカの所業だ。

 

自粛を求められている期間中に営業を続けた店や、都市部から帰省してきた人の家に誹謗中傷するビラを貼り付けたりする人物が現れたのだ。これだけでも相当卑劣な行為であるのは事実だが、こんなのはまだ序の口で、ネットで散々誹謗中傷したり、近所に根も葉も無い噂をまいて、引っ越しを余儀なくさせたり、精神にダメージ負うまで追い込んだり…。自分がやられてイヤだと思うことは他人にやってはいけない、なんて社会的なルールの初歩の初歩ですら守れない人間が増殖した。ネット社会の到来で、潜在的に増えていたこうした人物達が、コロナ禍という錦の御旗を手に入れて、コロナにかかった人、あるいはコロナにかかりそうな行動をしている人たちを叩きにかかっている。なんのことはない、中世の魔女狩りと構造的には一緒じゃねーか。そのうち、あいつはこんなにひどい臭いのある場所通っても何にも反応しなかったから、コロナにかかって嗅覚がおかしくなったに違いない、とか、急に抜け毛が増えたやつは絶対にコロナだなんてデマで、周りの人が松明持って押し寄せて焼き殺しちゃうなんて事件が起きるかもしれない。いや、実際の行動には繋がらなくても、ネットという場でのバッシングなんかは、十分に同じだけの威力を発揮している。

 

どっちにしろ、心身ともに変な「熱」にはうかされないで生活する冷静さと清潔さを持ち続けるしか一般庶民には防衛手段はない。世界各国でワクチン接種が始まり、日本でも医療従事者、老齢者、などの順番で接種が進んでいくだろうが、コロナ以前の生活の平静さを取り戻すにはまだまだ長い時間がかかりそうだ。コロナ後の世界で「あん時の俺たちゃバカだったなぁ〜」なんて笑える日が来るといいけどな、まったくよ。